「勝てるピッチャーに」―“エース道”歩む西武2年目右腕・今井が描く成長曲線

チームの勝利のために、さらなる成長を誓った西武・今井達也【写真:篠崎有理枝】
チームの勝利のために、さらなる成長を誓った西武・今井達也【写真:篠崎有理枝】

2年目の今季プロ初勝利を含む5勝をマーク「先発で投げる以上はチームが勝たないと」

 10年ぶりの優勝を果たした埼玉西武ライオンズ。今シーズン、1軍を目指す若獅子を紹介してきたが、最終回は2016年のドラフト1位、今井達也投手だ。ルーキーイヤーの昨シーズンは怪我に悩まされ1軍での登板はなく、2軍でもわずか7試合の登板に留まったが、今シーズンは6月13日の対ヤクルト戦で初登板初勝利を挙げ、5勝5敗の成績を残した。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでは第4戦に先発し、5回途中4失点で敗戦投手。CS初登板はほろ苦い結果となったものの、大きな経験になったことは間違いない。

 今井は栃木・作新学院高で、2016年の夏の甲子園全国制覇を成し遂げたが、2年夏の甲子園では、ベンチ入りを逃す苦い経験をしている。

「初めて大会で背番号をもらって、県大会の準々決勝、準決勝、決勝で投げさせていただいたんですけど、いいピッチングができませんでした。ベンチ漏れを経験してから『速いボールを投げたい』という気持ちから『勝てるピッチャーになりたい』という気持ちに変わりました。最初は球速にこだわっていましたが、先発で投げる以上はチームが勝たないといけない。自分の考え方が変わりました」

 それからは、無理に三振を取りにいかず、打たせて取るピッチングに変わったと振り返る。悔しい思いを胸に成長を遂げた3年夏の甲子園では、決勝までのすべての試合に先発し、チームを54年ぶりの優勝に導いた。最速152キロの速球を武器に好投を続け注目を集めたが、大舞台でも緊張することなく試合に挑めたという。

「僕たちは6年連続夏の甲子園出場がかかっていました。でも、最初はあまり強いチームではなかった。2年秋の県大会は準決勝敗退。3年春の県大会も準々決勝で敗退して、1度も大きな大会に出られませんでした。もともとスタートラインが高かったわけではないので、甲子園で負けても自分たちの高校野球が終わるだけでした。負けても失うものはなかった。選手みんながそういう気持ちでやっていたので、緊張することはありませんでした」

 甲子園制覇を成し遂げた後、秋にはU-18日本代表としてアジア選手権大会に出場。決勝の台湾戦では5回1失点と好投し、チームの優勝に貢献した。そして、ドラフト1位指名を受け埼玉西武に入団。プロでの活躍を誓ったが、肩の違和感に悩まされ、ルーキーイヤーは1軍での登板機会はなかった。それまで大きな怪我をしたことがなく、初めての経験だったというが、今井を救ったのはチームの先輩、菊池雄星投手にかけられた一言だった。

「夏の甲子園で投げて、その後にU-18でも投げて、休みがなかった。今思い返すと『体が休まっていなかったのかな』と思います。2軍にいた時、雄星さんに『ゆっくり、焦らずやっていきな』と直接声をかけていただきました。雄星さんも最初は肩を痛めて苦労されていたので、説得力がありました。それからはプラスに考えて、トレーニングができるようになりました」

「どっちかというと、球の質にこだわりを持っています」

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