“史上最大の下克上”から8年…西岡と成瀬、トライアウトで対峙した2人の想い

成瀬は「甘くなかった」、西岡は「人以上に思うことはあった」

 なんという運命のイタズラだろうか。投手に与えられる対戦打者は3人だけであるのに、成瀬の対戦相手に西岡が組み込まれたのだ。

 1ボール1ストライクから始まるシート打撃。1球目がボールとなると、2球目、成瀬が投じた真ん中付近の真っ直ぐを、西岡が逃さず弾き返した。打球は鋭い当たりとなり、左中間を破った。悠々と二塁に到達した西岡。二塁にいた走者は本塁へと生還した。適時二塁打だった。

 トライアウト終了後、2人はそれぞれ対戦についての想いを語った。成瀬は「できれば西岡さんはストレートで抑えたかったんですけど、結果的に甘くいって打たれました。変化球は投げられたんですけど、西岡さんにはしっかりストレートで勝負したという思いがあった。甘くなかったです」と意図しての真っ直ぐ勝負だったことを告白した。

 さらに「同じチームだった先輩とこういう形で対戦するのは、いい形ではないかもしれないですけど。やっぱり打席入ったら緊張感あるな、しっかり投げないといけないなと思うところもありましたし、打たれたくないとか、色んな思いがありました。その中で打たれてしまいましたけど、こういう緊張感で投げられるというのは、自分にとって良かったと思います」と振り返った。

 一方の西岡も「トライアウトが始まる前に手紙が配られて、成瀬との対戦というのは分かったんです。成瀬とはロッカーで会って、思い切ってお互いやるべきことをやろう、必死でどんな球でも思い切って来いと、僕も真剣にいくという話はした。打席に立って、成瀬がマウンドにいるというのは、人以上に思うことはありましたね」と特別な感情を抱いていたようだ。

 2010年のロッテ日本一の立役者となった2人。トライアウトという場での対戦は、決して本望ではなかったはずである。互いに現役続行への想いを抱く成瀬と西岡。2人に朗報が届き、今度は公式戦の舞台で再び対峙する機会は巡ってくるだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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