広島の強打者・新井貴浩を作ったもの―「練習は嘘つかない。やったもん勝ち」
「やらされる練習でも身につくものはある。やったもの勝ちの世界」
「確かに、間違った方向で同じことを繰り返したら、回り道が長くなるかも知れないけれども、最終的にはやったもの勝ちなんですよね。練習は嘘をつかないですし、やったもん勝ちですよね。何もしなくて休んでてうまくなるような甘いものじゃないので、やればやるだけ生き残っていく世界でしょうね」
何も考えず、がむしゃらに練習することは、多少方向性が間違っていたとしても、決して無駄にならない。身体を動かさないと、身につくことはない――という論理だ。自分をいじめ抜いてこそ、得られるものがあるというのは、猛練習でキャリアを作ってきた新井氏だからこそ言える言葉だ。
だから、ユニホームを脱いだ今でも、まだ引退したという実感はないという。
「まだ(現役生活が)終わったばかりなんで、実感というのはないですね。2月1日、キャンプが始まった時に、自分がユニフォーム着てないぐらいから、だんだん実感するんじゃないでしょうかね、いろいろなことを」
ユニホームを泥にまみれさせる練習こそが、新井氏の現役選手としてのアイデンティティをもっとも見せる場所。来年2月1日、1年間を戦い抜くための練習をする春季キャンプに参加することがもうないと再認識した時、初めて引退したという実感がわくだろうと新井氏自身が感じている。