「すっきりした」―ハム田中賢介、異例の前倒し引退宣言の裏にあった思い
「サポート役に回るというよりは、ちゃんと燃え尽きるまで」
熟考の末に現役続行を決めたのは、ファンの後押しと再び日本一になりたいという強い思いがあったからだ。「本当にたくさんの方々にお世話になったので、感謝の気持ちも込めて1年間、恩返しができるようにやりたい。パレードの先頭の車に乗って、皆さんに手を振れたら最高ですね」と話した。
会見後には「すっきりした」と漏らした田中賢。ここ2年間は、自身の立ち位置に苦悩していた。「いろんな葛藤がありました。自分がたくさん育ててもらった分、次の世代へ何とかいい形でつなぎたいなと思いながら、だけど自分もプロ野球選手としてやらなきゃいけないという複雑な心境の中で、ここ2年間はプレーしていました」と明かした。
前倒し宣言には、若い選手への気遣いがあった。「早く引退宣言した方が周りに気を使わせなくて済むかなと自分なりに思ったので。宣言したことによって、若い選手も僕に対して聞きやすいこともたくさんあるでしょうし、僕自身も伝えられることもたくさんあると思う。うまく僕のことを使ってくれたらなと思います」と若手に自身の経験や技術を伝授していく。
もちろんプロ野球選手である以上、数字を追求する。「自分の成績を最後まで求めていく。サポート役に回るというよりは、ちゃんと燃え尽きるまでやろうと思っています」と若手が乗り越えるべき壁になる覚悟だ。
個人目標はない。「本当にシンプルに日本一。それ以外に考えられないので」と力を込めた37歳。「最後の1年って思えば、パワーが出る」。3年ぶりの日本一だけを見据え、ラストイヤーに全力を注ぐ。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)