引退したいぶし銀のロッテ捕手 「1番思い出に残る」投手8人リードした開幕戦

「気持ちよく投げてもらうこと」を信条に、懸命なリードで8人の投手を操った

 ブルペンで受けた開幕投手・成瀬善久のボールは鋭かった。「ビシバシきていましたね」と金澤。ミットでボールを受けるたびに、成瀬のこの試合に賭ける強い想いが伝わってくるようだった。

「ブルペンでは調子のいい球を見極めて配球のイメージを固める。あの日の成瀬はストレートのキレが良かったので、ストレートを軸に組み立てることができると思っていた。やっぱり先発の基本はストレート。ストレートがあるから変化球が生きる。変化球だけでのかわす投球はやっぱり2巡もしたら相手打線につかまります。ストレートがあれだけキレがあったので、だいぶ手ごたえを感じて試合に入る事ができました」

 金澤の捕手としての哲学は「投手に気持ちよく投げてもらうこと」。そのためにも意識するのは、その試合で調子が悪い球種を楽な場面で投げさせることだ。

「この球種は調子が悪いから、使いませんというわけにはいかない。相手が絶対に打ってこない場面などカウント有利な場面でうまく織り交ぜてあげることで打者の頭に残像を残しておきたいし、使ってあげることで状態がよくなる可能性もあると思っている」

 この試合もキレキレのストレートを気持ちよく投げさせながらも今一つだったカーブなども効果的に織り交ぜ、エースを乗せていった。結果的に成瀬は打球を体に当て5回途中でマウンドを降りるが、4安打、1失点。最少失点に抑え、試合を作った。

 エース降板後も緊迫した試合は続いた。投手は次から次へと変わった。延長12回までまったく異なるタイプと性格を持つ8人の投手の球を操り、失点を抑えていった。1点の勝ち越しを許し迎えた延長12回。1死二塁から金澤も四球で粘り出塁。結果的にこの出塁が貴重なサヨナラのランナーとなる。

「勝ててホッとしました。最高の試合でした。なによりもキャッチャーとして最後までマスクを被れた。それが嬉しかったです」

 打っても3打数2安打。バファローズのエース・金子千尋から放った2安打は「リードに頭が一杯で、逆に打撃は無意識でいけたのかもしれないですね」と笑った。2013年はシーズン3位。クライマックスシリーズファイナルステージまでチームは勝ち進む。その起点となったのは開幕のサヨナラ発進。金澤の懸命なリードだった。

「気が付いたもん勝ち」の世界だからこそ、コーチとしてできることがある

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