「また4番を打ちたい」 西武未来の大砲候補が得た「4番」の経験と気付き
左の長距離砲として期待の戸川、昨季は2軍で4番を打つも…
「今年はもったいない1年でした」
西武の22歳外野手、戸川大輔に2018年シーズンを振り返ってもらうと、こんな答えが返ってきた。
2014年育成ドラフト1位で北海高から西武に入団すると、1年で支配下登録を勝ち取った。1軍で出場経験はないが、左の長距離打者として期待される未来の大砲候補だ。
2017年のみやざきフェニックス・リーグ。当時ファームで指揮を執っていた潮崎哲也2軍監督は、ここで戸川を4番に起用すると、2018年のイースタン・リーグ開幕後も4番を任せ続けた。投手として野球を始め、外野手に転向したのは高校時代。「4番なんて、打ったことないですよ」と、戸川ははにかんだ。
身長188センチ、体重90キロの恵まれた体格に合わせて、俊足もアピールポイントだ。2017年は怪我の影響もあり51試合の出場にとどまったが、2軍でチームトップとなる5本の三塁打を放った。激戦区の外野手争いの中でブレークが期待されるも、2018年はなかなか打率が上がらず。試行錯誤を重ねるうちに、理想としていたシンプルなフォームから、どんどんかけ離れていった。他の選手との兼ね合いで、慣れない一塁守備にも就くことも。打率は、見る見る落ちたが、それでも潮崎監督は4番から外さなかった。
「打てなかった次の日も、潮崎監督は4番で使ってくれる。結果でちゃんと応えないと」
そんな戸川が4番を外れた試合があった。4月22日に左肩痛で1軍登録を抹消された中村剛也が、2軍で実戦復帰した試合だ。中村は5月12日の巨人戦(高崎)から17日のDeNA戦(ベイスターズ)まで4番を打ち、戸川はその後ろの5番に座った。
真後ろから見る4番の背中は大きかった。2ストライクの場面で普通なら三振を恐れてしまうが、中村は恐れない。追い込まれても、打席の中で自分にとって打ちごろの“絶好球”を割り切って待つ。
なかなか思うような成績を出すことができなかった戸川は、一回り以上年齢が離れた中村に、次第にベンチで質問を投げかけたり、会話を交わすようになったりするようになった。その中でも心に残る印象的な言葉があったという。
「1軍に行ったら、フォークを武器にしている投手との対戦では、真っすぐを待っているところに来たフォークを打つのは無理だよ」
割切ることも、また肝心。あっけらかんと話す中村の不動心や立ち振る舞いは、戸川に多くの気付きをもたらした。
「中村さんは三振した後も堂々とベンチに帰ってくるんです。そういう三振が許されるのは、中村さんというバッターだからこそ。自分はまだまだですね」