「また4番を打ちたい」 西武未来の大砲候補が得た「4番」の経験と気付き

戸川に芽生えた4番に戻る覚悟「数字を残さないと戻れない。自力で戻るしかない」

 程なくして、中村は1軍に復帰した。その後も戸川は4番を任され続けたが調子が上がることはなく、打率は.220前後を推移。7月20日の楽天戦(西武第二)で、ついに4番を外された。その試合では7番に入り、3打数無安打。最終打席は代打を送られた。代打で打席に立った愛斗外野手が初球を勢いよく弾き返し、本塁打を放った。チームはこの本塁打をきっかけに得点を重ね、逆転勝利を収めた。

 試合後には「監督が思っている数字を残せなかった」と悔しさをにじませたが、シーズンが始まって4番を外れるまでの71試合、前年のフェニックス・リーグを含めると80試合以上の大半で4番を打った経験は、確かに残ったようだった。

「(4番は)大事なところで絶対回ってくると感じましたね。試合の行方を左右するところで回ってくることが多かったので、いい打順だと思います。本当に、うまくできていると思います。

 自分が打った試合はほとんど勝っています。打てなかったらチームが負ける。だからこそ、“自分が打たなきゃ負けるぞ”という場面で回ってきた時は、すごく興奮します。

 もちろん、また4番を打ちたいです。でも、数字を残さないと戻れない。自力で戻るしかない」

 戸川は力を込めて話した。

「今年はもったいない1年でした」と言った2018年。シーズン終了時の打率は.219。イースタン・リーグの規定打席到達者23人の中で、21番目だった。成績だけを見れば、確かに「もったいない。もっとできた」かもしれない。それでも、戸川は抱えきれないほど多くの貴重な経験と気付きを得たはずだ。

 入団5年目の今季は、1軍で活躍するためにも勝負のシーズンとなる。このオフは、かねてより「憧れ」と熱く語っていたソフトバンクの柳田悠岐外野手と一緒に沖縄で自主トレに励んでいる。日本を代表する「4番」と過ごす時間の中で、何を学び、何を感じ取ってくるのか。大きな体躯でメットライフドームのダイヤモンドを駆ける姿が、今から楽しみでならない。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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