「今は口だけの選手が多い」―現役引退の攝津正が体現したエースの“美学”

「投球スタイルは大きく変えていない」も…転機となった先発転向

「まだまだ自分には伸びしろがある。そう思って常にプラス思考で考えてやってきた。それが今まで、うまくいった部分だと思う」

 引退会見で語っていた通り、常に自分を高められる方法を模索してきた。その1つが投球フォームへのこだわりだった。先発に転向して結果を残し、最優秀投手と沢村賞を獲得した12年オフ、本人が自らの投球フォームについて語ってくれたことがある。

「社会人4年目に投球フォームを修正しようと思った。もともとコントロールが悪かった。でもアマチュアは短期決戦だから、それでは使い物にならない。調子の波をできるだけ少なくするように、テークバックを小さくした。修正した年は1年近く迷走したけど、なんとかしたい、良くしたいと思ってやってきた」

 常に伸びしろを求め、試行錯誤をしたのは試合中でも変わらなかった。投球フォーム、球種など、その日できることを試し、悪いものも捨てずに何かに生かそうと思ってやってきたという。

「投球フォームは試合中に微調整もする。細かいところだけど、ステップ幅や足の上げ方を変えたり……。体の使い方など、その日の調子に合うものを試合中に探したりもしていた」

「球種もそう。調子が悪い球種があっても、それをその試合で捨てるわけにもいかない。悪いなりに利用する方法を考える。悪い球をわざと投げて、打者の反応を見て使い方を考えたりしていた」

 攝津にとっての大きな転機はセットアッパーから先発への転向だった。

「先発転向に関してあまり大きく変えたことはなかった。もともとは先発でやりたい気持ちはあった。だから投球スタイルなどは大きく変えていない」

「その中でも考えたのは、打者との駆け引きの部分。先発では1試合で同じ打者と何度も対戦する。だから1打席ごとに大きく変えることも出てきた。自分の調子の良い球だけでなく、いろいろと使わないといけない。打席ごとの打者の考えなども考えて攻めるようになった」

 アマチュア時代から自らの伸びしろ、可能性を信じ、しっかり考えながらやってきた。それは日本最高峰の投手となっても変わらなかった。その姿勢で大きな変化へも柔軟に対応でき、5年連続2桁勝利など、結果にもなって表れた。

エースとはチームへの思いを行動に移し、真の信頼を得た存在

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