「MLBに行きたい」― マーリンズ・パークで一発を放った21歳捕手が抱く壮大な夢
元NPB選手も参加する「アジアンブリーズ」に入団、プロ契約を目指す
こうしてマーリンズ・パークで本塁打を記録するなど海外でのプレーに対して強い想いを抱いている福原。一体、彼と海外野球との出会いは何がきっかけだったのか。
「まだ野球を始める前ですが、祖父の家でMLB中継を見たのがはじまりです。小学5年生の自由研究は『MLB30球団の各ホーム球場の特徴』にしました。そしてその翌年には第2回WBCの様子をテレビで見ていたこともあって海外野球への憧れが強くなっていきました」
福原の小学生時代、MLBではイチロー外野手や松井秀喜氏らが活躍し、北京五輪やWBCなど日本代表が世界を相手に試合を繰り広げている時期と重なっていた。日本ではなかなか見る機会が少ない世界トップクラスのプレーに魅せられた福原が抱いた憧れの気持ちは現在の進路にも深くかかわることになる。
マイアミでショーケースを終えた福原の次なる挑戦として「アジアンブリーズ」への入団を決めている。このチームは2月21日から約1か月間、アメリカで各地での試合を通じてプロ契約を目指すというトラベリングチームだ。福原のほか、元楽天の横山貴明投手、元ヤクルトの中島彰吾投手らNPB経験者も参加する。
「ずっとMLBに行きたいと考えていたので自分にとってこれはチャンスだと思い、アジアンブリーズの創設者である色川冬馬さんに連絡をとって直接お会いしました。そしてMLBに行くための作戦会議を何度も重ねていくうちにアジアンブリーズ入団の提案を受けたので即決しました」
日本球界ではこうして自らチームを編成してプロ契約を掴みに行くという事例は少ない。プロ野球選手になることができるのはほんの一握りと言われる中でもこうしてプレーをアピールする機会を得て新たな可能性に挑戦することができる。アジアンブリーズに入団した選手たちはMLB傘下のマイナーチームやアメリカ独立、メキシカンリーグのチームと対戦機会を得ることができ、多くのスカウトが見守る中で試合をする予定となっている。
わずか21歳にしてMLBチームの本拠地でプレーした福原だが、彼の本当の野球人生はこれからといえるだろう。福原がプレーすることによって今後の野球選手に新たな道を示すことができる。今後の決意について聞くと次のような力強い言葉が返ってきた。
「野球でトップ選手になることが1番の目標ではありますが、野球をやっているだけの人間やただ上手な人間だけではつまらないと思うし、活躍しても記録にしか残りません。そうではなくて野球界に今までなかった何かを残せる人間になりたいです。誰もやっていないことならむしろチャンスだと思えるかどうかと考えています」
これは福原本人の決意と同時に今後の野球のキャリアについて悩んでいる人に対してのエールのようにも聞こえる。福原は「野球人として新たな生き方を模索する」というテーマをもっており、その答えの1つが今回のアジアンブリーズへの参加だ。これから始まる約1か月間の戦いの結果が福原の人生だけではなく、多くの若き野球選手のキャリア形成に大きな影響を与えることだろう。彼の今後の動向に注目だ。
(豊川遼 / Ryo Toyokawa)