中日根尾、驚きの行動と滲む人間性 報道陣に深々一礼「明日もお願いします」
取材後に報道陣に一礼「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
2月が幕を開け、ついに球春が到来した。沖縄、宮崎の各地、そして米アリゾナ州で12球団が一斉にスタートさせ、球界の“お正月”がやってきた。2月最初の土日は各地で、大きな盛り上がりを見せたことだろう。
丸佳浩外野手や岩隈久志投手らが加入し大補強を行った巨人や、その丸の人的補償で長野久義外野手が加入した広島、さらには内海哲也投手が加わった西武、昨夏の甲子園を沸かせた吉田輝星投手が入団した日本ハムの2軍キャンプなどが注目を集めているが、そこに負けず劣らずの注目度なのが、昨季セ・リーグ5位の中日だ。
昨年はソフトバンクを退団して移籍した松坂大輔投手の加入で“松坂フィーバー”が巻き起こったキャンプ地の沖縄・北谷町。今季も松坂人気は健在で、相変わらずの熱気を感じさせるが、今季はそこにドラフト1位で根尾昂内野手が加入した。「松坂+根尾」で人出はさらに増加。キャンプ最初の日曜日となった3日には、1軍キャンプ地の北谷には過去最高とみられる5500人の来場があった。根尾は右ふくらはぎ肉離れの影響で、読谷村の2軍キャンプにいるが、その「読谷平和の森公園野球場」にも連日数百人の来場がある。
甲子園春夏連覇を果たし、4球団競合の末に、ドラフト1位で中日に入団した根尾。超高校級のスターの加入、そして本拠地の隣県、岐阜県の出身ということもあって期待は大きい。さらには、その人間性がファンを惹きつける。医者一家に育ち学業成績も優秀でスポーツ万能。容姿に違わず、真面目で実直。たまに見せる笑顔は愛くるしく、親となった世代の人は“こんな息子が欲しい”と思うことだろう。
そんな根尾がとった何気ない行動の1つに驚かされた。第1クール中のひと幕だ。練習終了後、報道陣の取材に対応し終わった後のこと。根尾は自身を囲む10人を超える記者やカメラマン、TV局のクルーに向き合うと、こう言った。「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」。そして、帽子を取って深々と一礼すると、踵を返し、球場内を通って宿舎へ帰るバスへと乗り込んでいった。
まだ18歳、高校を卒業したばかりの青年が簡単にできる行動ではないだろう。合同自主トレがスタートしてからというもの、その一挙手一投足が注目され続けている。まだ別メニュー調整を続ける身でありながら、報道各社は“根尾番”を置いて2軍に貼り付かせているほど。連日コメントを求められ、煩わしく思っていても不思議ではないだろう。そんな重圧の中での上記の行動である。正直、恐れ入った。
帰りのバスに乗り込んだ後も出口付近で待ち受けていたファンの声援に、何度も頭を下げ、そして手を振って応えていた根尾。決して派手なことを口にするタイプではない。発するコメントも真面目で“記者泣かせ”かもしれない。だが、応援したい、大きく育って欲しいと思わせる。そんなちょっとした振る舞いに根尾昂という“人間”を見た気がした。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)