「心を折られつつ、楽しかった」最速153キロ、鷹ドラ1甲斐野が見せた大物の片鱗
「打者も初めてでどんなものだろうと思って来ていたと思う」
投げる度に衝撃を与えている。ソフトバンクのドラフト1位ルーキー甲斐野央投手。東洋大時代に最速159キロをマークしたという触れ込みは伊達ではなく、ブルペン、初の打撃投手、そして12日に行われた初のシート打撃と、圧巻のパフォーマンスを発揮している。
7日に行われた初のフリー打撃では最速150キロをマークし、主砲の柳田悠岐のバットをへし折った。12日は初めての実戦形式となるシート打撃に登板。先頭の上林誠知に対していきなり151キロを弾き出すと、3球目には152キロを記録。最後は左翼への二塁打とされたが、左翼手に打撃投手が入っていたためで、本来なら左飛となっているだろう当たりだった。
続く川島への1ボールからの2球目にこの日最速の153キロを記録。松田宣にも左前安打を許し、打者5人に対して2安打を浴びたが、150キロ台を連発して能力の高さを感じさせた。実戦形式で初めてプロの打者と対峙した甲斐野は三塁側のブルペンへと引き上げてくるなり「めっちゃ楽しかったです!」と笑顔を弾けさせていた。
川島を二ゴロ、内川を遊ゴロ、そして甲斐を空振り三振に切り、打者5人に対して被安打2、奪三振1。“実戦形式デビュー”を果たした右腕は「プロのレベルを感じられて良かったです。今までブルペンで投げていて課題だったことを潰すことを意識していました。スピードだけじゃいけないと痛感した」と振り返り、そして「(シーズンの)相手がソフトバンクじゃなくて良かったです」と主力選手たちの実力の高さに驚いていた。
上々のシート打撃初登板となったが、満足することのない、貪欲な姿勢に好感が持てる。主力級の打者との対戦を終え「まだまだだなと心の底から思いました」と率直に感想を口にした。「打者も初めてでどんなものだろうと思って来ていたと思う。これが本番になったらと思うと、どうなるんだろう」と冷静に分析していた。
この初登板は甲斐野にとって大きな一歩となったことだろう。「心を折られつつ、楽しかったです」。こう語る表情は充実感に満ち溢れていた。まだまだスケールアップしそう。そんな可能性を感じさせる、この日の投球だった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)