元ヤクルト・田中浩康氏、新たな人生の“打席” 決めた「覚悟」と「スタンス」
「学生と同じ目線でいたい」指導者になってわかったこと
コーチになって、約2週間が経過した。
「一部、二部練習と分かれて、みんなで練習しています。指導者は朝から晩まで、練習を見ていますので、当時の監督は大変な思いというか、一日中、学生に付き合ってくれていたんだなと、感じていますね」
コーチにならなかったら、たどりつかなかった境地だったかもしれない。全体練習が終わると、選手の方から田中コーチに話かけてきたり、田中コーチからも軽く声をかけるシーンもあった。会話のキャッチボールがテンポよくされ、コミュニケーションをとっている印象だった。
「学生に近い目線で立てればいいなとは思います。もし、何か質問があったら、『いつでも来て』とは言っています。限られた時間なので、その間に学生に少しでも伝えられたら……」
自室に戻り、風呂に入っていると、学生のことを思い出すこともある。
「アイツに『これを言いたいな』とか、『明日、伝えてみよう』とか、伝え方のニュアンスをどうするかとか、考える時はありますね。何か聞かれたときにこたえられる準備はしておきたいです」
まだ手探りの状態ではあるが、一日一日過ごしながら、経験を積んでいる。元プロ野球選手ということで注目されるが、田中コーチは、選手たちと「同じ目線」で「勉強する」というスタンスは崩すことはない。コーチ業に限ったことではなく、SNSの情報発信も、思いをつづる記事の執筆、野球振興、大学院生活も同じだ。
引退後の“その後”は野球選手にとっては不安なことだ。ただ、田中コーチは前向きに、まずは物事、事象をしっかりと捉え、挑戦する心を忘れない。打席でも大切だった「覚悟」と「スタンス」をこれからも大事に考え、新たな道へと進んでいく。
プロフィール
田中浩康(たなか・ひろやす) 1982年5月24日生。36歳。尽誠学園(香川)から早大を経て、05年にドラフト自由枠でヤクルト入団。粘り強い打撃と堅実な守備で活躍した。16年オフに戦力外通告を受けてDeNAに入団。二塁手でベストナイン2回、ゴールデングラブ賞に1回。通算302犠打は歴代5位。noteで有料マガジン「セカンド・ライフ」を執筆中。
Twitterアカウントは@hiroyasu0524
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)