プロ10年目、27歳の鷹育成左腕は覚醒なるか? 肩&肘の手術乗り越え「今が楽しい」
怪我との戦いだったプロ生活「今、楽しいです。久しぶりです、この感覚」
その速さも魅力的だが、何より今の川原は楽しそうだ。長らく故障に苦しめられてきた。野球選手にとって、投手にとって“命”とも言える肩と肘、双方にメスを入れた。苦闘の日々を乗り越えて、いま何事もなく思うようなボールを投げられていることに喜びを感じている。
「今、楽しいですね。久しぶりです、この感覚」と言い、頬を緩める表情は優しい。昨春のキャンプでも投げられてはいた。だが、心の中には怪我への不安が拭えなかった。「去年の今頃は肩痛くならないかな……という不安と勝負していたんですけど、今は全然そういうのがなくて」。
昨季1年間、大きな怪我がなくシーズンを投げ抜けたことで、徐々に不安を払拭できた。だからこそ、いま生き生きと野球が出来ている。「肩に不安がないということだけで楽しいです。こんなこと手術してからは、今が初めてじゃないですかね。何かしら肩大丈夫かな、肘大丈夫かな、と思っていましたから」と振り返る。怪我で苦しんでいた時期は、毎朝目覚めると、まず左肩の状態を確認した。それが1日の始まりだった。ただ、それも今では「そんなに気にならなくなりましたね」という。
川原は24日に行われるB組の練習試合・斗山ベアーズ戦に登板する予定。再びA組の対外試合でも登板が見込まれている。「野球をできているんで、それがいいですね」と笑った後、川原は言った。「10年目で、やっとですね」。苦闘の日々を乗り越え、ついに芽吹きの時を迎えるか。プロ10年目、27歳の育成選手、川原弘之。支配下復帰、そして1軍の舞台を目指す戦いは、ここから本番だ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)