元中日・岩瀬氏が引退セレモニーで涙「マウンドに上がるのは怖い日々でした」
今季からは解説者に「皆さん、噛んでも許してください」
■ロッテ 3‐1 中日(オープン戦・2日・ナゴヤドーム)
昨季限りで現役を引退した元中日の岩瀬仁紀氏が2日、ナゴヤドームで行われたロッテとのオープン戦で引退試合を行った。先発マウンドに上がった左腕は、先頭の井上晴哉を“伝家の宝刀”スライダーで空振り三振斬り。万雷の拍手に送られて、マウンドを下りた。試合後、引退セレモニーに臨んだ岩瀬氏は、時折涙で言葉を震えさせながら、感謝の言葉を並べた。
引退セレモニーで、中日OBの山本昌氏、山井大介投手から花束を受け取ると、涙で目を潤ませながら感謝の気持ちを球場にこだまさせた。引退試合という場が設けられたことについて、球団や監督・コーチ、選手に感謝。そして、スタンドを埋め尽くすファンに向かって「今日球場に集まっていただいたファンの皆さん、本当にありがとうございます」と伝えた。
1998年ドラフト2位で中日に入団。翌年に1軍デビューを果たすと、昨季まで20年間投げ続けた。その間は常に「怖さ」を持ってマウンドに上がっていたという。
「プロに入って20年が経ちましたが、ずっとマウンドに上がる時は同じ気持ちでした。一番最初に打たれて、プロの怖さを知り、それからずっと、マウンドに上がるのは怖い日々でしたが、マウンドに上がってその怖さを振り払って投げることができるようになってからは、自分の投球ができるようになりました」
そして、この日上がったナゴヤドームのマウンドでは違った感情に包まれた。
「ずっとマウンドに上がるのが怖かったんですけど、今日だけは楽しくマウンドに上がることができました」
前人未踏の通算1002試合登板、407セーブという大記録を打ち立てたが、その道のりは平坦ではなかった。「これまで沢山の人々に本当に支えてもらって、岩瀬仁紀という人間を作っていただいたんだと、改めて思いました。本当に今日は沢山の人が集まってくれて、ありがとうございます」と伝える声は、時折涙で揺れた。
今後は解説者として、別の立場から野球と新たな付き合いが始まる。「これからは全く自信のない話の方で、解説という立場になりますが、皆さん、噛んでも許してください」と照れ笑いすると、球場からは温かい笑いと拍手が溢れた。
「本当に20年間たくさんの声援をいただいて、ありがとうございました!」
中日を支え続けた鉄腕が、静かにマウンドから降りた。