「できていく感じ、作っていくより」―イチロー、取り戻しつつある“実戦勘”

走攻守で実戦勘を確認「できていく感じですね、作っていくというより」

 今年1月に史上初の得票率100%で殿堂入りを果たした歴代最高652セーブを誇るマリアノ・リベラの宝刀、カットボールをそのバットの軌道で何度もファールで凌いだシーンが浮かび来る。久々に見る“らしいファール”に着実に進める調整の確かな手応えを感じ取ったはずだ。

 唯一なかった守備機会を得たのは4回。1死一塁で上がった浅いフライを難なく捕球。16イニング目で初遭遇したプレーだったが「リズムもありますから。(打球が)来ないからといって何もないということはないです」と話す。試合前の練習では、頭上に上がる打球に背走し後ろ向きのままキャッチ。フェンス際の大飛球を追う想定の動きを見せるなど、フリー打撃で守る外野での時間も大切なイメージ作りの場である。

 ヒットで出た一塁では、バーンズの執拗な牽制に3度続けて手から帰塁。走攻守で実戦勘を確認するプロセスを「できていく感じですね、作っていくというより」と説明したイチロー。問われたその進展度をこう結んだ。

「言わなきゃいけないかな、僕が……」

 敢えて語らず――。言葉が残す余韻にこの日の充実度が漂う。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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