「僕なら1番右翼で先発させる」ア軍メルビン監督が語ったイチローとのエピソード
メジャー通算500盗塁を決めたイチローが発した言葉「成功率が半分とか、バカな盗塁は基本的にしない」
3月20、21日の「2019 MGM MLB開幕戦」に向けて、アスレチックスのボブ・メルビン監督が16日、都内で記者会見を行った。03年と04年の2シーズンをイチローとともに戦ったマリナーズの監督時代から今日に至るまで、お互いを敬う関係が続いている。敵将はイチローの活躍を予言した。
「イチローは母国を背負ってプレーすると思う。日米で名前の知れ渡った選手。この大舞台でいいプレーを見せるだろう。それに対抗すべく頑張りたい」
会見が終わってフィールドに出たメルビン監督としばし談笑した。ノックバットを片手に、いくつかのエピソードを披露してくれた中で、最も印象的だったのが、走塁だった。
「ある日のこと。イチローに『カウント3-0からの盗塁成功率は100%だ』と伝えたら、二盗、三盗と走りまくったんだ(笑)」
眼鏡の奥に見える目じりのしわを見て思い浮かんできたのが、メジャー通算500盗塁を決めた時のイチローが発した言葉だった。3年前の4月終わりのことだった。
「僕は成功率が半分とか、バカな盗塁は基本的にしない。かなり確率が高いタイミングでしか行かない」
むやみやたらと行かないことが時として勝機を作り、隙あればとことん行く――。“確立主義”を標榜するイチローが、メルビン監督が示したその数値に焚きつけられたのも十分理解できる。
盗塁を含めた走塁には常に状況判断が求められる。今から7年前の3月。マリナーズとアスレチックスは今回と同じ東京ドームで開幕戦2試合を戦った。その1戦目、延長11回1死二塁での5打席目に、この試合4安打目となる中前安打を放ったイチローが、その直後に光るセンスを走塁で発揮している。本塁生還を狙う走者と返球が微妙なタイミングになると判断したイチローは意図的に二塁へ向かう。一、二塁間に挟まれ二走の生還を見事にアシストしたのだ。
メルビン監督はこう言って雑談を結んだ。
「僕ならイチローを1番・右翼で先発させる」
東京ドームでの初練習で5連発を含む10本の柵越えを放ったイチロー。アリゾナのキャンプを上回る豪打は自軍サービス監督の目にどう映ったか。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)