東京Dで見た極めて異例なイチローの姿 巨人原監督の思い「でも、イチローだぞ」

WBCの思いをなぞった原監督「でも、イチローだぞ。イチローなんだぞ」

「フォア・ザ・チームの気持ちはわかる。でも、イチローだぞ。イチローなんだぞ。打って出るのを皆が見たいんだ。あの時、決して強くは言わなかった。でも、監督からすれば、あの一つのアウトで戦術が変わってくるんだ。イチローには担うべき、イチローだから担える役割というものがあるわけだから」

 イチローの打撃について一切言及しなかった原監督が10年前の思いをなぞる。その心根を推し量る必要はないだろう。

 一方で、一塁側の巨人ベンチから試合を見つめていた吉村禎章打撃総合コーチは、イチローの打撃をこう評した。

「私には、彼の中でもがいているというような雰囲気はまったく感じられないですね。どんな形でも打てていたバッター。周囲の見るような今こういう(悪い)状態だというふうに、彼が考えているとは私にはないように映りますけどね」

 24打席連続無安打、打率.065。イチローは心の中でもがいていないのか――。同コーチは言う。「ベンチから守備に就くまでの走る姿はいいですね」。

 18日のプレシーズンゲーム第2戦、1回裏の守備で右翼へ向かうイチローの背中を追う映像が中堅後方の大画面に映った。背筋は伸び下半身で推進していく姿を見たある日本人スカウトは言った。「選手の気持ちは背中に出る。僕は後ろ姿を大切に見てます」。プロの眼にも映る「折れない心」というものがあるのだろう。

 20日の試合に向けてイチローの先発出場を明言したスコット・サービス監督は「彼の開幕に私は胸を躍らせている。バッティングはキャンプでふるわなかったが、数日経てば回復するのがイチローだ。楽しみにしている」と期待を寄せる。

「気持ちで打ったことは1度もありません」

 母国で迎える日本開幕戦。かつてこう喝破したイチローは20日、これまでにない真価を問われる打席に立つ。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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