イチローは三振後に睨み返した… 元ロッテ黒木知宏氏が明かした2人の“秘話”

「いずれそういう時が来たらゆっくり話をしてみたい」

「ぶっちゃけ、会話はしてないです。彼にとって今年のキャンプが野球人生を賭けるほどのものになるのは分かってましたから。何かを聞こうとして気持ちに水を差すようなことはしたくなかった。解説者の立場が彼の環境を邪魔したりするのを気にしました。到着した日と帰る日だけをクラブハウスで伝えたくらいです」

 奇しくも、21日の試合後に行われた引退表明会見の結びで、イチローは異国での挑戦の日々から得た心の軌跡を言葉に凝縮している。

「メジャーリーグに来て、外国人になったことで人の心を慮ったり人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れてきました。孤独を感じて苦しんだこと、多々ありましたよ。ありましたけど、その体験は、未来の自分に取って大きな支えになるんだろうと、今は思います」

 かつての勝負で育んだ鋭敏な感覚は、時の経過とともに人の心の懐に触れる心眼を育んだ。黒木氏は大きな目を細めて言った。

「いずれそういう時が来たらゆっくり話をしてみたいなと思います」

 図らずも、「その時」は話を終えた数時間後にやってきた。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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