イチローの凄さどこに? WBCで共闘した松中信彦氏語る「毎回ほぼ同じ時間に…」
「僕たち同級生のスーパースターなので、その雄姿を、プレーを見られないのは凄く残念」
会見の様子も、テレビを通して見たという松中氏。ウィットに富み、時に笑いを、そして時に深みを感じさせるやり取りに「イチローらしい感じはしましたけどね」という。そして「1番大事なのは悔いがないっていうかね、そういうところが選手としては1番大事だと思うので。数々の大記録を作ってきた僕たち同級生のスーパースターなので、その雄姿を、プレーを見られないのは凄く残念ですけど、ただただお疲れさまでしたと言いたいですね」と語った。
2004年に平成でただ1人の3冠王に輝き、翌2005年にも2年連続で本塁打王と打点王を獲得。現役生活19年間で352本塁打を放った大打者だった松中氏から見た、イチローの凄さとはどこにあったのか?
「WBCのアメリカ戦で死球を受けて、その翌日に誰よりも早く球場に行きました。施設が充実していたので、なるべく試合に出られるようにと、治療とかをしていたんですけど、その時にはもうイチローは球場に来てバッティング練習をしていた」。2006年のWBCを回顧し「準備にかけるところは凄い。常に誰よりも早く来て、バッティング練習して、まだ通常のバッティング練習をし、と。そこは感心するというか、それを毎回ほぼ同じ時間、同じタイミングでやっていたので、そこは凄いなというのを覚えています」。イチローが良く言う準備の大切さ。それは一流の打者たちから見ても、凄かったという。
「天才、天才と言われていたけど、その見えないところでの努力というのは凄いんだな、そうじゃないとあそこまでの記録は出せないんだなと思います。プレッシャーや大舞台の中で結果が出せるのは、見えない努力なのかなと」と、いつも変わらず、淡々と準備、努力を続ける姿勢に驚かされた。
そんな偉大な打者にも訪れた引退のとき。松中氏は、日本に凱旋した試合でプレーする同級生を見ていて、これまでと違う姿を感じていた。「ボールが速く感じているんだろうな、と。彼は打ちに行って見逃す、自分から攻めていくスタイルだと思うんだけど、今回は巨人戦から見ていても“受け”ていた。詰まった打球とかも多かったし、それはどうしてもボールが速く感じて、見え方が違っているんだろうなと、テレビ越しでも感じていましたね。イチローらしくない凡退の仕方だった。ああいう姿って全く考えにくい光景だったのが、実際にそうなるというのが、僕も経験ありますけど、目が付いていけてないというのあったのかなと」。
誰もが驚き、衝撃を受けた稀代のヒットメーカーの引退。「スーパースター」と呼ぶ同級生の“引き際”に、松中氏もどこか寂しそうだった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)