高橋由伸氏、伝説の開幕戦初球アーチに隠された“秘話” 前夜に定めた「狙い」

元巨人チーフスコアラーの三井康浩氏【編集部】
元巨人チーフスコアラーの三井康浩氏【編集部】

松井氏と高橋氏の練習量に脱帽「スーパースターにならないとおかしい」

「別にホームランをボンボン、と放り込むのではなく、顔がぶれないので、ミート率がよかったですね。本人に聞くと、大学時代とは全然違うフォームだったみたいです。プロのスピードについていけないからと自分で変えたと言っていましたね」

 プロになってからフォームの変更をしていた。1年目のシーズン、三井氏は高橋氏と多くの会話をしていない。開幕して2か月経過した頃、調子を落としたことがあった。誰に相談するでもなく、ロッカーで考えこんでいたため、一言、声をかけた。

「『バックスクリーンに打つイメージで行ってみてはどう?』と。それとバットのかぶせ方が気になったので、私からの見た印象を少しだけ言いました。すると、次の日、たまたま高橋選手が大当たりしまして……。私の意見がどこまで影響したかはわかりませんが、それをきっかけで話をするようになりました」

 それ以降、一緒に打撃について考える時間が増えた。三井氏は役職が変わろうがずっと温かい目で高橋氏を見守ってきた。

「けがさえなければ、もっとできた選手。彼の姿勢ではあるんだけど、フェンスに突っ込んでいく。けがが続いた時は『もう少し、なんとかならんか?』と聞いたこともありましたね。松井選手はけがをしたら元も子もないというタイプでそういう部分は冷静。高橋はそこにボールがあるから飛んでいく。対照的でしたね」

 もっと由伸氏のヒットやアーチを見たかったのかもしれない。

「松井選手と高橋選手は対照的だけど、あの2人の練習量はすごかった。それだけは言えます。松井選手は地味だけど素振りでバッティングを作っていくタイプ。高橋選手はティー打撃などボールを打って作っていくタイプ。スーパースターにならないとおかしいですよ」

 何千も、何百も試合を見てきても、記憶に残るプレー、思い入れのあるプレーがあるのはスコアラーも変わらない。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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