勝利ではなく、楽しくて仕方がない野球を 「安部球場『あそび場』開放2019春」開催
勝亦陽一東京農業大学准教授「子供たちに『野球の楽しさ』を体験してもらうのが目的」
子どもたちの体がほぐれたころに、第2部の「野球あそび」が始まる。
まずは「ならびっ子ベースボール」。守備側と攻撃側に分かれ、攻撃側はティーに置かれたボールを打って、一塁側に走りだす。守備側の全員がボールの近くに集まってアウトを宣するまでに、一塁線に置かれたパイロンを回って帰ってくることができれば点が入る。野球のルールを簡略化したものだ。
最初はやや緊張気味だった子供も、ゲームを続けるうちにどんどん表情が明るくなってくる。打つ、走るという野球の楽しさを実感できる。このゲームへの参加は自由。キャッチボールやノックを続ける親子もいれば、スタッフからボールの投げ方、受け方の指導を受ける野球初体験の子供もいる。9時スタートだが、遅れてやってくるのもOK、途中で帰るのもOK。一切拘束せず、自由に「野球遊び」を楽しんでもらうのが目的だ。
「ならびっこベースボール」のあとは、ややルールが複雑な「ベースボール5」。内野に3つのベースが置かれ、走者はベースを回って帰ってくる。「ならびっこベースボール」を体験した子供たちは、すぐにルールを理解して遊び始める。2部に入ってもスタッフはルールの説明をするだけ。適宜水分補給を指示する以外は、ほとんど指示、指導をすることはない。子どもは思い思いにゲームを楽しんでいる。
「今の時代、野球を始めるのはハードルが高くなっています。『時間・空間・仲間』という野球をやるために必要な3つの『間』がないからです。そういう子供たちに『野球の楽しさ』を体験してもらうのが目的です。『勝利』ではなく『楽しくてしかたない』が子供の主体性と創造性を育むことにも繋がります」
イベントの責任者で、早稲田大学野球部出身の勝亦陽一東京農業大学准教授は語る。
11時、親子はアンケートを記入して、上気した顔でグラウンドを後にした。疲れさせることなく「もう少しやりたい」と思わせる程度で終了する。これも「野球好き」を作るポイントだ。中には1回目からほとんど皆勤の親子もいる。
「安部球場『あそび場』開放2019春」は、西東京市在住の小学生と保護者ならだれでも参加可能。春は、あと3回。4月28日、5月18日、6月2日にも開催される(雨天中止)。
(広尾晃 / Koh Hiroo)