「求めれば求めるほど苦しくなって…」ロッテ3年目右腕を襲った突如の制球難
昨年の台湾遠征で井口監督は高評価「エネルギーに変わりました」
最も厳しい査定者が島本人だったのかもしれない。投球フォームと物の見方を調整しながら、いい投球と悪い投球の振れ幅を縮める作業を繰り返した。シーズン中こそ11試合で防御率10.80だったが、10月のみやざきフェニックス・リーグで成果が現れた。8試合に登板して無失点。「フェニックスで攻め姿勢が重要だなって本当に実感しました。気持ち次第で、自分の中での感じが変わる気がすごくしました」。
さらには11月の台湾遠征でも2戦無失点と好投し、井口監督から高く評価された。投げるたびに自信が増していたが、何よりも指揮官からの評価は「エネルギーに変わりました」と言う。
まだ20歳。浮上のきっかけを掴めば、巻き返しは早い。春キャンプでは1軍に同行し、オープン戦でも投げた。少し遠回りをしたかもしれないが、1軍で投げる自分の姿も「こんな感じかな」と、朧気ながらイメージを描きつつある。
昨年、小野コーチはどこに飛んでくるか分からない時速150キロ近い球を何度も体に当てながらも、「寄り添わないと」と島のキャッチボール相手を続けた。今季はここまで7試合に投げて防御率0.00。「まだまだですよ」と首を横に振りながらも笑顔を隠せないのは、島がくぐり抜けた苦しみを知っているからだ。同時に「1軍で活躍できるだけの素材は持っている」と、秘める才能を認めてもいる。
島が持ち味として自負するのは、もちろん「真っ直ぐ」だ。「真っ直ぐで三振を取るのが、ピッチャーをやっていて一番気持ちいいです」。最近刺激を受けたのは、日本ハム石川直也のストレート。「球速もそうですし、バッターが打てない、バットに当たらない真っ直ぐ。すごかったですね」。自分の真っ直ぐも、もっと磨きを掛けようという思いを強くした。
今年は、まず1軍に呼んでもらえるように安定した投球を続けることが目標だ。子供の頃に憧れたのは、2000年代の阪神を支えた速球左腕ジェフ・ウィリアムスだった。セットアッパー、守護神として活躍した幼少期のヒーローのように、勝利の方程式の一角になる日を目指して、今日も浦和の2軍球場で汗を流す。
(佐藤直子 / Naoko Sato)