3つの広がりを獲得したスライダー…菊池雄星、“聖地”での快投を支えたもの

3年前に訪れたヤンキースタジアムで2勝目「正直、イメージはできなかった」

 そのスライダーは仲間投手からも注視されている。

 登板前日の7日(同8日)だった。菊池はブルペン入りしていた若手右腕エリック・スワンソンにスライダーの握りとリリースを伝授した。依頼したポール・デービス投手コーチは「腕の振りは違っても切れ味のいいスライダーを投げるユウセイにアドバイスをしてもらいたかった」と経緯を説明。4月11日(同12日)にメジャーデビューを果たした25歳の右腕は満面の笑みをたたえ振り返った。

「大きく曲げようとして手首を動かさないことを教えてもらった。小指をキャッチャーに向けて立てること。その意識で指を使うということがとても参考になったね。僕がこれまで思ってきたこととは違っていたから、そりゃ新鮮だよ」

 序盤での失点が続き、球数がかさみ試合中盤までを投げ切れない登板もあったが、苦境を乗り越え輝き出した菊池に寄せられる信頼は高まる一方だ。

 菊池は言う。

「いろんな引き出しが僕の中でも毎試合増えているなぁというのは感じます。そこを監督、コーチやキャッチャーも認識してくれて配球も少しずつ変わってきてるのを感じます」

 西武時代の2016年9月28日、菊池はシーズン最終戦で日ハムの大谷翔平(現エンゼルス)と本拠地で投げ合うと、試合後に成田空港に直行。翌日の早朝便でエコノミー席に身を沈め米国へ到着し、ヤンキースタジアムで宿敵ドソックスとの試合を2日続けて観戦。目の当たりにした熱い戦いはメジャー挑戦への意識を昂ぶらせた。その3年後、菊池は聖地のマウンドで躍動した。

「3年後にこうやっていいピッチングができていると正直、イメージはできなかったですけどね。良かったと思います。自分のボールを日本で投げていたボールに戻すことが早い段階でできたのが一番大きい」

“聖地”で投げた今季最多の106球にはいくつもの思いが籠っていた。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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