常識に囚われない“栗山流” 日ハム杉浦、ぶっつけ先発の裏にある考え、前例に大谷翔平

「実戦感覚を不安視されると思いますが、僕の中ではそんなに不安はなかったですね」

「実戦感覚を不安視されると思いますが、僕の中ではそんなに不安はなかったですね。下で投げるという選択肢もありましたが、日程的な問題と、投げても少ない球数なら、なくてもいいかなと。自分の感覚次第。初回の入りだけは気をつけようと思いました」と杉浦は経緯を明かす。この間のブルペン入りは2回だけ。いずれも60球ほどを投げて感覚を研ぎ澄ませ、準備をしていた。

 ドラフト1位で14年にヤクルトに入団した大型右腕は、これまで故障に泣かされてきた。栗山英樹監督は「状態が良ければ、あれだけのピッチングができる。彼の野球人生を前に進めてあげたい。もっといい球を投げるよ」と今後も右肩の状態を慎重に見極めながら起用していく考えだ。

 球界の常識にとらわれない指揮官だからこそ、異例のぶっつけ登板が実現した。試合前に栗山監督はこんな話をしていた。「答えがあるわけじゃないけど、今回(2軍で)投げずにいくのは一つの大きな試み。本人の感覚を聞きながら、これがベストと思って勝負にいく。スギを信じるだけ」。その後で「翔平も調整なしでやったことがあるし」と付け加えた。

 翔平とはエンゼルスの大谷翔平投手のこと。一昨年、当時日本ハムに在籍していた大谷はシーズン序盤に左大腿二頭筋肉離れで戦線離脱した。先に野手として復帰した後、投手としては7月12日オリックス戦で初登板。その後、2戦目の8月31日ソフトバンク戦、3戦目の9月12日楽天戦はいずれも2軍での調整登板なしで臨んでいた。

 コンディションを見極め、本人の感覚を確認しながらタイミングを計ったあの経験が、今に生きている。杉浦の次回登板は未定だが、栗山監督ならきっと本人にとってもチームにとっても最良の時期を見極めることだろう。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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