菊池雄星、直球で挑んだ理由「力めるフォームできた」

遠投を行うマリナーズ・菊池雄星【写真:木崎英夫】
遠投を行うマリナーズ・菊池雄星【写真:木崎英夫】

根拠のある力みで力勝負、メジャーで生き残るため「その力を上回りたい」

 本拠地初勝利を決めた試合後の囲みが解けると、菊池は“力み”について淀みなく続けた。

「やっぱりあんな相手とやるのは嫌ですよ。でも囲みでも言ったように、ストレートで押せたっていうことはこれから僕がメジャーリーグで生き残るためにもすごく大事な日だった。あの場面、力みました。でも、“力めるフォーム”ができていたから力めた。ちょっと力むのが一瞬でも早くいと、ボールってそのままの軌道で行ってしまうので。今は(体の)軸がしっかりできているというかな」

 日本と違い固いマウンドで腕が遅れて出てしまい意図せずして高めにボールが行くことも多かったのが4月序盤だった。その頃は捕手方向に90度で向かって行く理想的な順回転を生む回転軸に微妙なズレが生じていた。しかし、菊池は動作の解析データとしっかりと向き合い咀嚼して、正しい体の回転を確認するにはうってつけの古典的な「遠投」でボールの軌道を確認するなど、左腕が横振りにならない工夫をいろいろな形で取り組んできた。

 球速だけにとらわれず、理想の軌道と回転数に支えられた直球に球速を追い求めて来た菊池。登板前日には今季からデータ分析と投球向上の指導役を担うブライアン・デル―ナスコーチから右肩の上げ方で意見交換する姿があった。

 テークバックを取った際に「右肘を高く上げることで肩のラインをマウンドの傾きと逆にし、左の軸足に体重がしっかり乗ることがスピードを生む」と、以前、同コーチが説いていたのを思い出す。

 今季11試合目の登板はこの先に向けた試金石になった。

「メジャーは力と力の勝負ができる相手がすごく多い。その中で、その力を上回りたい。そういう気持ちを持たないと、この世界では生き残っていけないと感じる」

 蒼天のシアトルで左腕は根拠のある自信をつかみ取った。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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