「漁師か消防に」「もう野球をやりたくない」西武ドラ7が一度は諦めたプロへの夢

目指すのは唯一無二の存在「西武の1軍で試合に出ている9人の中にいないような選手」

 富士大では1年時からリーグ戦に出場。しかし2年時には、インコースを責められることが増え、それに対応できずに打率を落とした。

「コーチにバッティングピッチャーをやってもらい、夜遅くまで練習をして打ち方を変えました。それから、自分で食材を買いに行って、寮で自炊を始めました。体が大きくなったことで、飛距離も伸びるようになりました」

 その結果、3年春には首位打者と本塁打王、秋には打点王を獲得。そして、18年のドラフトで埼玉西武から7位指名を勝ち取った。

「4年の時はプロを意識しすぎて全く結果を残せませんでした。なので、ドラフトにもかからないと思っていたので、びっくりしました。西武から指名されたときは『先輩がいっぱいいる』と思いました。大学ではみんな西武の試合を見ていて『今日穂高さんホームラン打ったよ』と話していました。会ったこともないのに、みんな『穂高さん』って呼んでいました」

 笑顔でそう話すが、目指すのは先輩達のような打者ではなく、西武にはいないタイプの選手だ。

「自分の強みは守備だと思っていますが、打てたなければレギュラーにはなれない。でも、自分が山川さんのようにホームランを40本打つのはたぶん無理です。二塁打、三塁打を打ってランナーを返して、打点王を獲れるようなバッターになりたい。今、西武の1軍で試合に出ている9人の中にいないような選手になりたいと思っています」

 チームでただ一人となる新人開幕1軍入りを果たし、4月6日の日ハム戦ではプロ初安打も放ったが、4月20日に2軍に降格。「球も早いし、コントロールもいい。すべてにおいてレベルが高い」と、1軍の投手と対戦した感想を話す。今は、少ないチャンスものにして1軍で結果を残し、レギュラーに定着することを目標に置く。一度は地元に戻ろうと考えたはルーキーは、チームで唯一無二の存在を目指し、プロの世界に挑む。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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