これからの少年野球のあり方は? 練習時間短縮、球数制限、指導者の怒声禁止…堺BBの進める改革
期待したい指導者の意識改革と少年野球人口減少の歯止め
こうした現実を考えても、少年野球は改革の必要があるだろう。高校野球は真夏にトーナメント制の全国大会を行っている。このルールが大人たちには「勝ちたい」「勝たせてやりたい」というプレッシャーになる。また勝てば勝つほど日程が厳しくなり、選手の負担も大きくなる。少年野球の大会もそれに倣ってトーナメント制で行われている。
プロ野球を見てもわかるように、本来がリーグ戦の野球は勝率6割で優勝が決まるようなスポーツだ。トーナメントが、勝利至上主義の弊害を生んでいる側面は否定できない。目先の勝利を追いかけるあまり、フェアプレーは軽視され、相手チームに汚い野次を飛ばす文化を生んでいる。また、短期的な結果を求める指導は、子どもに考える余地を与えず、指示待ち人間を生んでいる危険性がある。指導者が絶対的な存在になり、子どもは痛みがあっても言い出せない環境にある。
果たして、それで本当の信頼関係は生まれているのか?
こうした事を考えた末に、堺ビッグボーイズは改革を断行。指導者を総入れ替えし、MLB関係者をスーパーバイザーとして招聘、さらに主催していた大会をトーナメントからリーグ戦へと変えた。練習時間を短縮し、指導者の怒声、罵声を禁止。また学年に応じて球数制限や変化球制限を実施した。さらに指導者の一部に給料を払い、プロ化した。4年前には小学部も立ち上げた。そして堺ビッグボーイズOBのDeNA筒香嘉智選手がスーパーバイザーに就任した。
この改革によって、チームに笑顔が戻り、子どもたちが主体的に野球に取り組むようになった。そして、多くの子どもが堺ビッグボーイズに入部するようになった。また指導者はプロになることで、責任感が増した。もちろん、問題がないわけではない。この改革によって中学部の目先の勝利は増えていない。
もっとハードな練習をする強豪チームに移籍する子どももいる。そういう部分では課題もあるが、堺ビッグボーイズは今後も改革を進めていくと、瀬野代表はこのイベントを締めくくった。
このイベントに参加した兵庫県下の高校、中学、小学校の指導者と瀬野代表、阪長コーチとの間で、質疑応答や意見交換が行われた。今回は、指導方法や技術論ではなく、指導者、経営者目線での「少年野球のあり方」がテーマになった点はユニークだったと言えるだろう。こうした地道な取り組みによって、指導者の意識改革が進み、少年野球人口の減少に歯止めがかかることを期待したい。
(広尾晃 / Koh Hiroo)