元DeNA北方悠誠を獲得のドジャース 決め手は160キロ超の球速と“野球への思い”

ド軍日本担当顧問・鈴木陽吾氏「心・技・体のすべてにおいて判断」

「スカウティングというのは総合力。心・技・体のすべてにおいて判断をします。オフも休まずにトレーニングしていること、課題のコントロ―ルがいい方向だということも調査で確認ができました。球速も高いレベルを維持している。本人の野球に対する姿勢、そういったことを含めて、総合的な判断をさせていただきました」

 北方は2012年に佐賀・唐津商高からドラフト1位でDeNAに入団。14年に戦力外となり、15年はソフトバンクで育成選手としてプレー。高校時代から150キロを超える直球で将来を嘱望された右腕がイップスにもなった。まだ20代前半で2度のNPBから戦力外。厳しい現実に何度も心が折れそうになった。野球を辞める選択肢もあった。

 それでも応援してくれる家族のため、野球が好きな自分の気持ちを裏切りたくなかった。独立リーグのチームを転々としながら、練習だけは止めなかった。高いところでもう一度プレーするという思いも失わなかった。一度は失ったスピードが150、152、156……今では160キロを超えた。球速が戻っただけではなく、先に進んだ。

 ドジャース入りにつながったのは、そのような野球への思い、熱だった。これは北方にしか持っていないものだ。

 会見で、同じように夢を追う独立リーガーへのエールを求めると、これまでの苦悩を思い起しながら、北方は言葉を繋いだ。

「僕も独立4年目になるんですけど、諦めず、思い切り、しっかりやっていたら見てくれている人は見てくれる。手も気も抜かずやっていたら、いい結果出ると思うし、納得して次のステップアップできると思っています」

 北方はドジャースのユニホームを身にまとうと、照れくさそうに笑みを浮かべた。「日本人の大先輩、前田健太さんが活躍されているということ。ワールドシリーズに出ている強いチームの印象です」。30人以上の報道陣を前にして、自分がドジャースについて語っている姿を4年前、想像できていただろうか。

 これで終わりではない。北方のこの先には見たことのないような光景が待っている。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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