斎藤佑樹に憧れた元早実エース 天然ガス営業マンから異例のMLB挑戦のワケ

「あの時、諦めないで良かった」―予想できなかった復活ストーリー

 さらに、野球の動作解析を行っている専門家と出会ってフォームを見直し、治療院に通って体のバランスを整えながら、復活を目指した。すると、徐々に全盛期に近い感覚を取り戻し始めた。「自分一人じゃできなかった。支えてくれた人がいたから、段々と求めているものに近づいて行った」という。

 戦力外から1年足らず。夏になると、新たな思いが芽生えた。また高いレベルで野球がやりたい。そして、その場所は――。教えを受けていた動作解析と治療院の恩師はかつて米国で野球に携わっていたこともあり、自然と影響を受けていた。視線の先に浮かんできた景色は、太平洋の向こう側にあった。

「話を聞くだけじゃなく、飛び込まないとわからない。プレーヤーとして成功することは大前提としてあるけど、この1年をどこで野球をやるかと考えた時にどこで野球をやるかのがベストだと考えたら米国だと。明日クビ、明日昇格もあり、年齢が問われない世界。だから、ここでやってみたいと思った」

 今年2月に会社の有給休暇を使い、1か月間に渡って米トライアウトに挑戦。チーム形式でメジャー傘下のチームと戦い、見事にジャッカルズとの契約を勝ち取った。社会人野球で戦力外通告を受けてから、わずか1年4か月後の出来事。周囲も予想できなかった復活ストーリーを、己の右腕で描き上げた。

「あの時、諦めないで良かったと思う。アメリカの天然芝に青い空の下で立てた時は本当に気持ち良かった」

 目標はMLBで成り上がること、そしてNPBから声のかかる選手になること。武器は重さのある直球と落差の大きいフォーク。厳しい挑戦になることは理解している。それでも、挑戦へ向け「思っていたより楽しみが大きい。トライアウトを経て、ピッチングも仕上がってきている」と内田。大志を抱き、今日、海を渡る。

○内田 聖人(うちだ・きよひと)

 1994年3月1日、静岡・伊東市生まれ。25歳。伊東シニアで日本一を経験。早実高2年夏に甲子園出場し、背番号1を着けた3年夏は西東京大会で高山俊(現阪神)、横尾俊建(現日本ハム)らを擁する日大三に2失点完投も準V。早大では1年春に大学日本一を経験したが、3年時に右肘を故障。社会人野球JX-ENEOSでは故障の影響もあり2年で戦力外に。以降は社業に就き、天然ガスの営業マンを務める傍ら、個人で1年間トレーニングに励んで復調。今年2月から1か月間、米国でトライアウトに挑戦し、2Aクラスの独立リーグ・キャナムリーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。会社を退社し、NPB、MLBに挑戦する。右投右打。

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