引き分けに持ち込む起死回生の同点打 鷹・今宮、土壇場でのひと振りに込められた思い
敗戦まであとアウト1つの9回2死二塁で同点の左前適時打
■ソフトバンク 2-2 阪神(交流戦・11日・ヤフオクドーム)
敗戦まで、あとアウト1つ。その土壇場で試合を振り出しに戻したのは、今宮健太のバットだった。
11日、ヤフオクドームで行われた阪神戦。1点ビハインドで、ソフトバンクは9回裏の攻撃を迎えていた。先頭の釜元が右前安打で出塁。高谷が犠打で送り、得点圏へと走者を進めた。福田は左飛に倒れ、2死二塁となったが、ここで打席に立ったのが、9日までの広島3連戦に欠場していた今宮だった。
マウンド上には、8回まで2安打1失点と好投していたメッセンジャー。2ボールからの3球目だった。真ん中へと入ってきた145キロの真っ直ぐ。これを弾き返すと、打球は左前へ。ダイビングで突っ込んだ福留のグラブのわずか先で弾んだ。二塁走者の釜元が一気に生還。9回2死から試合を振り出しに戻した。
結果的には試合は延長12回引き分け。ソフトバンクは首位から陥落することになったものの、試合後、今宮は「結果的には勝てはしなかったですけど、負けなかったのはいいこと」と振り返った。
今宮にとっては“思い”のこもった一打になった。左太もも裏の張りなどで、敵地広島での3試合はスタメンから外れて欠場。今宮自身は「野球はできる状態」と語っており、決して重症ではない。それでも、万全を期したい首脳陣が大事をとったということ。この日が4試合ぶりのスタメン復帰だった。
「与えられたところで結果を残せればいい。去年の代償、怪我を舐めていた部分はあるので。何もできないのは悔しい」。昨年9月に左太もも裏の肉離れを負い、長期離脱を余儀なくされた。その時の怪我が、少なからず、今も影響を及ぼしている。ただでさえ怪我人続出で苦しんでいる今季のソフトバンク。これ以上の離脱者を出さないために首脳陣は慎重になるもの。今宮自身も逸る気持ちと折り合いをつけて、出られる試合に臨んでいる。
「毎試合どんな体調であれ出るつもり、出るべきだと思っている。その気持ちだけは忘れずに、これからもやっていきたい」。出たくても、出られない時がある。本意ではないその状況をなんとか受け入れ、出た試合で全力を尽くす。この日、試合を引き分けに持ち込んだ一打は、そんな今宮の思いが詰まった一振りだった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)