「少しでも元気に…」平成唯一の3冠王・松中氏、現役から続ける難病児支援活動に込められた思い

松中氏自身も難病「ネフローゼ症候群」の息子を持つ父親

 引退後は、現役時代と同じような活動を続けるのは難しくなった。それでも、今でも小児がんの子供たちを慰問したり、そういった子供にプレゼントを贈ったり、演奏会に脚を運んだりと、地道に活動を続けているという。

「支援したいし、なんとか治ってほしいという気持ちもあるし、少しでも元気付けられたらなという思いもある。工藤監督もオフに病院に行かれている。自分の中でも子供が難病になって、初めて親の大変さも分かるし。親の負担はすごいし、一生懸命介護している。そういった親御さんにも、こうやってきて、子供と一緒に写真を撮って、少しでも元気になってもらいたいんです」

 昨年10月、突如として脊髄内腫瘍を患った陽翔くん。ホークスの選手が歩み寄る度に表情を崩し、そして、家族も嬉しそうにその時間を噛み締めていた。この様子をみた松中氏も「練習中に選手たちには本当に申し訳なく思いましたけど、選手たちが協力してくれて、選手が来た時の陽翔くんの顔を見ると、やっぱり良かったなと思いましたね」と語った。

「僕は息子が難病でなかなか人と接することができない状況だった。そういう子供達は結構多くて、なんとかしたいという思いで支援していました。ただ現役を退いてからは、なかなか現役のようには出来なくて。でも、そういう声は凄く聞くんです。『行きたいけど、行けないんです』と。そういう子供たちに対して、現役の選手たち、今日陽翔くんと接してくれた選手たちが、ひと肌脱いで何か支援をやってもらえたらな、と思います。球団にもスーパーボックスを1部屋提供してくれるようなことがあれば有難いなと思いながら、いまも活動しています」

 平成唯一の3冠王、松中信彦。ホークスに、そして球界に、より一層、こうした病児支援の輪が広がることを願っていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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