野手はヤクルト中村、投手は中日柳が出色の好成績…セイバー目線で選ぶ6月月間MVP【セ編】

勝利数や防御率などは山口が上だが、セイバー指標では柳に軍配

〇6月月間MVP セ・リーグ投手部門
柳裕也(中日)
登板4 3勝0敗
QS率100% FIP1.83 RSAA7.41 K/BB8.5(すべてリーグ1位)
防御率0.87 WHIP0.90(リーグ2位)奪三振率9.87 被打率0.214

 候補選手は8名。その中でも有力なのはこの3投手です。

○柳裕也
登板4 3勝0敗 完投1 防御率0.87 奪三振34 奪三振率 9.87 被打率.214

○山口俊
登板5 4勝0敗 防御率0.77 奪三振38 奪三振率9.77 被打率.172

○上茶谷大河
登板4 2勝0敗 完封1 防御率1.32 奪三振23 奪三振率7.57 被打率.189

 勝利数、防御率、奪三振数、被打率がリーグ1位である山口俊が公式の月間MVPを獲得する可能性が高そうです。また上茶谷大河がルーキーとして完封一番乗りを果たすなどの活躍を見せました。もしNPBに月間最優秀新人賞があるなら確実に受賞ものでしょう。

 ではセイバーメトリクスの視点での評価を見てみましょう。

○柳裕也
FIP1.83 WHIP0.90 QS率100% HQS率100% K/BB8.50 RSAA7.41

○山口俊
FIP2.43 WHIP0.91 QS率100% HQS率80% K/BB3.80 RSAA6.02

○上茶谷大河
FIP2.68 WHIP0.91 QS率75% HQS率50% K/BB3.29 RSAA3.95

被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、6回以上登板で自責点3以内に抑えた割合を示すクオリティスタート(QS)率、7回以上登板で自責点2以内に抑えた割合を示すハイクオリティスタート(HQS)率、与四球に対する奪三振の割合を示すK/BB、そして平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標である

RSAA=(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

など各部門において、柳裕也の指標はリーグ1位を示しています。特にQSだけでなく、HQSも登板4試合全てで達成というのは出色の成績です。また月間四死球5もかなり少なく、山口俊の14と大きな差になりました。ちなみに1イニングあたり許したランナーの平均数を示すWHIPの月間1位は石川雅規の0.79でした。

ハーラートップタイの9勝、QS率73.3%の安定感を誇る柳ですが、昨年との違いが数字上で見られるのはスライダー。昨年のスライダー被打率が.316に対し、今年の被打率は.212と大きく改善しています。ドラフト1位で入団から3年目にして中日先発投手陣の中核を担い、パ・リーグ相手に安定の投球を披露した柳が6月の月間MVPに相応しいと言えるでしょう。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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