野手はブラッシュ、投手は岸と楽天勢の働き光る…セイバー目線で選ぶ6月月間MVP【パ編】
投手は楽天の岸&松井、ソフトバンクの大竹&千賀が候補
○6月月間MVP パ・リーグ投手部門
岸孝之(東北楽天ゴールデンイーグルス)
登板4 2勝2敗
FIP2.50 QS率100% RSAA4.04(リーグ1位)
防御率3.12 WHIP1.08 奪三振30 奪三振率10.38
有力候補の成績を振り返ってみましょう。
○大竹耕太郎
登板4 3勝0敗 防御率3.95 奪三振17 奪三振率5.60 被打率.229
○千賀滉大
登板4 3勝1敗 防御率2.88 奪三振31 奪三振率11.16 被打率.217
○岸孝之
登板4 2勝2敗 防御率3.12 奪三振30 奪三振率10.38 被打率.224
○松井裕樹
登板13 2敗10S 防御率2.77 奪三振21 奪三振率14.54 被打率.093
3、4月が援護率0.56、5月が3.82と援護に恵まれなかった大竹耕太郎ですが、6月は5.59と援護に恵まれたこともあり無傷の3勝をあげました。公式の月間MVPの有力候補となるでしょう。
それでは、セイバーメトリクスによる評価をみてみましょう。
○大竹耕太郎
FIP2.83 WHIP1.02 QS率25% 与四球6 K/BB2.83 RSAA-1.95
○千賀滉大
FIP2.38 WHIP1.32 QS率75% 与四球13 K/BB2.38 RSAA0.07
岸孝之
FIP2.50 WHIP1.08 QS率100% 与四球6 K/BB5.00 RSAA4.04
松井裕樹
FIP2.27 WHIP0.77 与四球6 K/BB3.50 RSAA2.35
被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、6回以上で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率において岸がリーグ1位となりました。大竹は奪三振が少なく、被本塁打が4と多いためFIPが伸びませんでした。またQSも1回のみとセイバーメトリクスでの評価は高くありません。千賀は奪三振は多いものの、与四球が13と多かったため、こちらもFIPの値に影響しています。
さらにRSAA(Runs Saved Above Average)という平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標
RSAA=(リーグ平均FIP?選手個人のFIP)×投球回数/9
による評価でも岸はリーグ1位の成績を残しています。よってパ・リーグの月間MVPとして岸が相応しいのではないでしょうか。
なお、奪三振率の高い岸、千賀、松井裕樹の空振り三振割合を比較すると、
岸孝之 60%
千賀滉大 83.9%
松井裕樹 81.0%
となり、三振の取り方のスタイルに大きな差があることがわかります。特に岸の見逃し三振率40%は12球団でも指折りの部類に入ります。相手の読みを外す投球術と絶妙なコントロール技術の賜物と言えるでしょう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。