「チームに貢献するため」“守備の人”からプロへ 西武ドラ3野手の転機とは?

社会人時代はトヨタ自動車の補強選手として都市対抗に出場も…

「辛かったですね。だいぶ落ち込みました。今でも、先輩方に会うと申し訳ない気持ちになります。バッティングで結果を残せるようになったのは、2年の秋からです。3年生の方々がプレーしやすい環境を作ってくれたことも大きかったと思います」

 それまでの守備中心の練習から、打撃練習を増やしたことで、バッティングが楽しいと思えるようにもなった。そして、2年秋にはベストナインを獲得。そこから4季連続ベストナインを受賞した。4年時にはエースに佐々木千隼投手(ロッテ)を擁し明治神宮大会準優勝。しかし、自分の実力では無理だとプロ志望届は提出しなかった。社会人の三菱自動車岡崎にはセレクションを受けて入社。1年目からレギュラーを掴み、2年目の都市対抗はトヨタ自動車の補強選手として出場したが、ここでもラストバッターになってしまった。

「トヨタの人たちは『補強なんだから、お祭りだと思って思い切ってやれ』と言ってくれたんですけど、なかなかそうは考えられなかった。2回戦のJR東海戦で、チャンスで打てなくて、最後のバッターになりました。トヨタの皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした」

 都市対抗でも活躍することができず、プロ入りは難しいと思っていたが、西武からドラフト3位指名を受け入団。4月20日に1軍初昇格を果たしたが、8試合で打率.091、5月18日の対オリックス戦では、相手に逆転を許すタイムリーエラーを犯すなど守備でも精彩を欠き、5月23日に再び2軍に降格した。

「うまくいきませんでした。1軍ではサードを任されましたが、ほぼ経験がないので、ミスもありました。あのミスがなければ、勝てていた試合。今井も完封できるピッチングでした。今井は『大丈夫ですよ。次々』と言ってくれて、先輩方も『誰でも通る道』と励ましてくれました」

 降格してからは、1軍で活躍できる力をつけ、信頼してもらえる守備ができるよう練習を重ねる。偶数年のドラフト3位は、10年の秋山翔吾外野手、12年の金子侑司外野手、14年の外崎修汰内野手、16年の源田壮亮内野手と、主力選手が並ぶ。秋山には「お前は偶数年のドラフト3位なんだから、活躍すると思ってプレーしろ」と声をかけられた。

「期待を裏切っちゃったかな。いや、これから頑張ります」

 力強くそう答えたルーキーは、ドラフト3位の先輩達とともに1軍のグラウンドで躍動するため、汗を流す毎日だ。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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