【あの夏の記憶】目標は「打率8割」 大阪桐蔭・西谷監督がプロを見据える藤原恭大に挑んだワケ

金足農業との決勝戦、藤原の心に刻まれた打席は…

 時計の針を2017年夏に巻き戻してみよう。5年ぶり2度目のセンバツ制覇を果たした大阪桐蔭は、藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)のバッテリーを擁した2012年以来となる春夏連覇を目指した。長い歴史を誇る高校野球でも2度の春夏連覇となれば史上初。偉業達成に向け、まずは大阪大会で優勝し、甲子園では1回戦、2回戦と順調に勝ち進んだ。そして迎えたのが8月19日、3回戦・仙台育英戦だった。

 この試合で、大阪桐蔭は9回裏2死まで1-0とリードしていた。マウンド上には当時2年生だった柿木。走者一、二塁のピンチも、初球で若山壮樹を遊ゴロに打ち取った……かに見えた。遊撃を守る泉口友汰が打球を捌いて一塁へ送球。一塁へヘッドスライディングした若山より一瞬早く、ボールは一塁手・中川卓也のミットに収まった。が、中川は一塁ベースを踏めなかった。2死満塁の大ピンチ。すると、次打者の馬目郁也に中堅へ2点タイムリーを弾き返されてしまった。まさかの逆転サヨナラ負けで、春夏連覇の夢は途絶えた。

 27個目のアウトを取るまで、勝負の行方は分からない。あの日、最後に頭上を越える打球を懸命に追い続けたのは、センターを守っていた藤原だった。だからこそ、1年後の第100回記念大会決勝は13-2と圧勝したが、27個目のアウトを取る瞬間まで気を引き締めた。

「最後まで何があるか分からないですし、相手もすごく勢いに乗っていたので、最後まで自分たちの野球をしようと思ってやっていました」

 逆転に次ぐ逆転で強豪を破り、決勝まで駒を進めた金足農業は、文字通り“旋風”を巻き起こしていた。下馬評は決して高くなかったが、一人で全試合を投げていた吉田輝星(日本ハム)を中心とする勢いのあるチーム。何が起きてもおかしくない。

 決勝戦。連投の疲れを隠しきれない吉田に、大阪桐蔭打線は容赦なく襲い掛かった。結果、吉田を5回12失点とKOしたが、この日立った5打席のうち、藤原の心に強く刻まれたのは、空振り三振に倒れた第1打席だったという。1回裏、無死一、三塁の先制機に3番・中川が空振り三振を喫し、続く藤原も斬って取られた。「3番、4番と連続で三振を取られたので、やっぱりすごいなと思いました」。

 だが、ここからきっちり修正を加え、第2打席から3打席連続ヒットをマークした藤原もすごい。

「やっぱり真っ直ぐ中心のピッチングで変化球の割合も少なかったんで、真っ直ぐ一本に絞って、変化球は真っ直ぐ待ちの対応しました。それが上手いことはまりましたね。3打席連続(安打)といい感じで波に乗れたし、4番としての仕事もできたと思います」

「自分はそこまで努力したって言えないです」

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