大船渡・佐々木、投げずに敗退の是非 専門家は「監督が決めたなら、それが正解」

大船渡・佐々木朗希【写真:荒川祐史】
大船渡・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

佐々木が決勝で登板せず大敗「賛否両論ある問題」も…「監督が決めたことだから正解」

 第101回全国高等学校野球選手権大会は25日に各地で地方大会が行われ、岩手大会では佐々木朗希投手擁する大船渡が決勝で花巻東に2-12で大敗した。佐々木はベンチスタートのまま、マウンドに上がることなく敗れ、35年ぶり2度目の優勝はならず。“令和の怪物”を甲子園で見ることはできなくなったが、未来ある逸材の潜在能力は計り知れないだけに、国保陽平監督の判断を支持する声は多い。

 同日に第90回都市対抗野球の決勝戦で始球式を行った元中日監督・GMの落合博満氏は「周りがとやかく言う問題ではない。そこで指揮を執っている監督の最善策。騒ぐ人は責任のない人。議論にしてはいけないんです」と指摘したが、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季までヤクルトでバッテリーコーチを努めた野口寿浩氏も「監督が良かれと思ってしたことで、佐々木君がちゃんとそれに対して納得しているのであれば、それが正解だと思います」と話す。

 野口氏はまず「周りで見ている我々のような人間からは賛否両論ある問題だと思います」と言及。佐々木は投げるべきだったのか、それとも、実際に投げなくてよかったのかについて、正解を出すのは難しいという。

「1人の選手の体を守るために、学校単位でやっている部活動の周りの選手のことはどうなるのかというのもあるだろうし、将来ある1人の選手の未来を潰さないために使わない、というのもあるだろうし……。両方の意見があるでしょう。その中でどちらを選んだとしても、監督さんには大変な決断だったと思います」

 結果として大船渡は佐々木を決勝で使わないという結論を出した。この思いを尊重すべきだと野口氏は言う。

「そういう状況で決めたことなので、それが正解なんだと思います。監督が良かれと思ってしたことで、佐々木君がちゃんとそれに対して納得しているのであれば、何の問題ない。それが正解だと思います。こうやってプロ野球界で仕事をさせていただいている身として、『甲子園に出場して何百球投げました。その結果、佐々木くんが怪我をしてしまいました』となったら大変なので、ずるい大人の考えとしてはこれで良かったとも思うんです。一方で、甲子園で見られなかったのは残念だなとも思う。なので、これはこれで、監督が決めたことだから正解と言えるでしょう」

 近年、育成年代の選手の肩や肘をしっかり守るべきだという流れは日本でも強くなっている。一昔前なら、佐々木のような投手を地方大会の決勝で起用しないという采配は猛批判を浴びた可能性もある。だが、こういう選択肢ができたというだけでも、球界が変わりつつあることが分かる。

「無理して投げさせて故障したら、というリスクのほうがやっぱり大きい」

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