元DeNA荒波翔が独白 なぜメキシコ野球を選んだのか…「最初は全然選択肢になかった」

メキシコの打者は「当てるという意識はなく、強く振って三振なら仕方ないという考え」

――打者として大変だったことは?

「日本とは違って初めて見る投手ばかりで、試合前にも日本のようにミーティングがないので、どんな球種を投げてくるのか分からず、球の軌道のイメージもないまま、ぶっつけ本番で打席に立たないといけませんでした。直球も動きますし、追い込まれた後、日本だと球種が分かっているので粘れますが、どの球が来るのか情報がないので分からない。なので、来る球に反応するしかなくて、ボールを見すぎて(打ち取られて)後悔したこともありました。他の選手たちはメキシコでの経験があり、ウインターリーグでも対戦していて相手投手のことを分かっていたので、なるべくチームメートに聞くようにはしていましたが、(左打ちの)自分のところで左投手が出てくることも結構あったので、その時は打席で対応していました」

――メキシコの打者はどんなタイプが多かったでしょう?

「常に強いスイングを心掛けていて、逆方向でも同じスイングをしてくる。それを子供の時から教えられているんだと思います。日本のように当てにくる打者は少なく、しっかり軸で振ってくる。当てるという意識はなく、強く振って三振なら仕方ないという考えで振ってきます。日本人は下半身を使って打つので、上半身を上手く使える人は少ないですが、向こうの選手は上半身を使ってバットのヘッドのタイミングを取るのが日本人よりも上手い。下半身だけでなく上半身の力も最大限使ってスイングができるんです。日本人は追い込まれたりすると、逆方向に手で操作して打ちますが、メキシコの選手は引っ張るスイングの中で逆方向に打てる。投手目線で見たら、失投したら危ないだろうなと思うタイプの打者が多かったですね。守備、走塁の技術は日本の方が優れていますが、打つことに関してはメキシコの方が優れているなと思いました」

――守備、走塁面で感じたことを教えて下さい。

「僕がプレーしていたモンテレイは監督が元メジャーリーガーの方だったので、意外と細かい野球をしていましたが、相手チームはどこもそうではなかったですね。外野の守備も(打球の)後ろから入って捕ったりしないですし、走塁でもリードの取り方について細かく言っているチームはなかったように思います。あと、向こうの選手は「流れ」に対する感覚がないんです。日本人とは違い、ここでエラーや盗塁失敗をしたら流れが変わる場面だなというところでも、これはしてはいけないというプレーがない。日本でやっていた時は、流れが悪い時は初球は打ちに行かず、四球を選ぶことも意識してやっていましたが、向こうの野球はそういう細かい部分はなかったですね」

――メキシコでは標高が高い場所でも試合をしましたが、低地との違いを教えて下さい。

「標高1500メートル以上の街に本拠地があるチームが16チーム中7チームあるんですが、標高が高いところだと、高く上がった打球は落ちてこなくて、そのままフェンスを越えて全部本塁打になるんです。打撃練習時の打球の伸びを見て、球場ごとに守備位置を変えていましたが、高地は低地よりも10?15メートルくらい後ろに下がって守っていました。逆に、低地だと前に落ちる打球でも、高地だと落ちてこない分、追いつけるので、フェンスまで全力で走って打球に追いつく距離を計算し、前の打球にも対応できるように考えていました。逆に投手からしたら『(低地なら打ち取ったはずの)あの打球でも本塁打になっちゃうのか……』という落胆はあると思います」

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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