「何気ない変化に気づくこと」西武を支えるトレーナーが心がけること【パお仕事名鑑Vol.3】

7月に完成した最新施設の一部である“トレーナー室”【写真:沼田悟】
7月に完成した最新施設の一部である“トレーナー室”【写真:沼田悟】

「その選手のやり方を否定しないこと」

「どの選手にもいえることなのですが、その選手のやり方を否定しないこと。即戦力で入ってくるような選手は、ある程度自分の中のルーティーンでやってきているものがあって、それも大切にしてあげなきゃいけない。もちろん高校卒業したばかりの選手でも、今まで教わってやってきたことで結果を出してきた。それは大事なものでもあるので、それを踏まえてアドバイスしていきます。でもいろいろあるから、面白いですよね」

 疲労の蓄積、成長の過程、ゲームがある日とない日、出場できた日に出場できなかった日、雨の日と晴れの日、活躍した翌日と落ち込んだ翌日……。トレーナーと選手の体との関係は日々刻々と変化する。この変化を積み上げることですぐに今日の変化に気づくことができる。

 そして朗報といえるのが、素晴らしい環境が加わった点だ。新たな室内練習場と寮などの最新施設が7月に完成した。

「トレーナー室、トレーニング室、寮が一体化したのは大きい。何やってるのかがすぐに把握できます。選手、コーチ、我々とチーム全体が揃っているので、気になっていることをドア1枚開けるだけで話すことができる。この環境はやりがいもありますね。いいものをどんどん提供していきたい。もちろんその分成果を出さなければいけませんね」

 新しい施設での「やりがい」。2009年から西武に加わった中村さん。まだまだここでやるべきこと、やりたいことは広がっているようだ。では、中村さんはどのようなステップを経て、この仕事に就いたのだろうか。意外にも、それまでは野球の経験も知識もなかったのだという。

 中村さんは、大学までバスケットボール部に所属。卒業後も競技を続けたいという思いがあったという。

「選手でやれるのが一番だけど、それはなかなか難しい。それでも現場で、選手の近くで一緒に一喜一憂したかった」

 競技の現場にいられる仕事。そう考えて目指したのがトレーナーだった。トレーナーは人の体に触れる仕事だけに、鍼灸・あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師、PT(フィジカル・セラピスト/理学療法士)といった国家資格や、AT(アスレチック・トレーナー)といった民間資格が必要。中村さんも卒業後は、資格取得を目指して勉強を続け、トレーナーを派遣する会社で働きながら資格を取得。ここでさまざまな競技を経験する。

「バスケットボールは2チームで8年。野球も単発では何回か。ほかに陸上の女子長距離チーム、女子プロゴルフのパーソナルトレーナーなども担当しました。野球もそうだったのですが、陸上もゴルフも最初はまったく知らない世界でした。監督やコーチとコミュニケーションをとりながら経験を積んでいきました」

トレーナーのやりがいは「若い選手が成長して1軍で活躍してくれる」

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