中日藤嶋が“凍える右手”から奇跡の復活 16試合連続無失点と成長支える「上原イズム」

今年現役を引退した上原に陶酔、密かなお願いごとも「僕、チキンハートなんでなかなか」

 防御率0.00。1軍昇格後は、リリーバーとして16試合連続で無失点を誇る。直球の球速は平均して2、3キロ速くなった実感があり「リリースがハマってきたのが大きいかなと思います」。球を放す位置に角度をつける意識で、昨季はプロ初勝利を含む3勝。その土台を作ったのが、上原さんのフォームを参考にしたことだった。球団関係者を通じて対面も果たし、身振り手振りで体の使い方や投げる際の感覚などを教わる機会もあった。当初は「頭で理解しても体で表現するのは難しい」と手探りだったが、確実に自分のものにしつつあることを、いまの結果が示している。

 日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成した球界のレジェンドには陶酔しきり。「めちゃくちゃカッコいいですよね! やばいっす!」。5月には上原さんから引退報告の連絡をもらって驚いた。寂しい気持ちとともに「僕よりも連絡しないといけない人は多いはずなのに……」と感謝。何より「気にしているから頑張れよ」と言ってくれたことがうれしかった。圧倒的な実績や気迫全開のマウンドだけでなく、ひしひしと感じる男気や気遣いも見習いたいと切に思う。

 血行障害から復帰を果たした際には報告した。決して気軽に連絡できるような存在ではないが、いま密かにお願いしたいことがひとつある。

「上原さんと同じ登場曲にしたくて。使っていいですかって聞きたいんですけど、僕、チキンハートなんでなかなか……」

 試合終盤に「Sandstorm」が流れると球場は沸き、空気が変わる。メジャーでも、昨季の東京ドームでも。何度見てもしびれる光景を、いつか自分でも作り出したい――。勇気を持ってメッセージを送れば、あの曲がナゴヤドームで流れる日もそう遠くはないかもしれない。「上原さんみたいになりたいっす」。投げられない危機から救われた21歳は、さらなる高みを見据えて「上原イズム」を注入し続けている。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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