田中将大、菊池に痛感させた円熟味 「3球種を上手く」指揮官も褒めた配球の妙

「対峙しているバッター1人をどうやって抑えるか」

 初球スライダーでストライクを取ると、2球目はボールとなる148キロの直球を投げ込む。この日の変化球の出来からすれば、相手打者が直球に的を絞るのは当然だった。 

 田中は1球1球打者の反応を見てそこを感じ取っていたはず。ボーゲルバックは3球続けてスライダーを見送り3-2の投手不利なカウントに持ち込んだ。しかし、田中は「今度こそは」と直球を待つ打者心理を逆手に取り、内角低めスライダーで勝負。体勢を崩されたボーゲルバックはバットを出せずにあえなく見逃し三振。

 7回の1死二塁の場面では、先とは違う妙味で5番マーフィーを3球斬り。前の2打席で変化球打ちを試みている相手に対し、入り球に直球を選択すると、裏をかくようにもう1球続けた田中。バットを出さない相手に最後、外のスライダーで空振り三振に仕留めた。直球の残像を利用した変化球勝負に菊池の女房役マーフィーも“読み負け”する完敗だった。

 田中は滑らかな口調で言った。
 
「一気にアウトが2つも3つも取れるわけではないので。対峙しているバッター1人をどうやって抑えるかということもしっかりとフォーカスしながらいい投球ができたと思います」

 マーフィーに続くボーゲルバックをスライダーとスプリットの交互で5球連続の変化球で中飛に打ち取った。3塁側ダグアウトに向かう田中のその姿に、ある日の黒田博樹氏(元ヤンキース)が重なった――。

 得意のツーシームを「あるぞあるぞ」と相手打者に警戒心を募らせ、最後までその球を使うことなく打ち取った黒田博樹氏(元ヤンキース)。田中はその先輩黒田氏を超えて、日本投手としてメジャー初の6年連続二桁勝利を手にした。

 この日同じマウンドで投げ合い、4回5失点で9敗目を喫したマリナーズの菊池は日本時代も通じて初対決の田中の投球にこんな感想を寄せる。

「全体的なバランス、コントロールだったりとか、本当に僕自身がこれから勝つために必要なものを勉強させてもらいました」

 2年ぶりのメジャー日本投手対決で注目された一戦で、田中将大は新人の菊池雄星に円熟味を増した出色の投球術で圧倒した。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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