【U-18W杯】世界一を目指した親子の思い 侍J宮城の父が「汗臭い」帽子を被り続けたワケ

「強気」と書かれた帽子は宮城が試合で使っていたもの。「みんなの思いが詰まっている」

「息子に黙って、勝手に持ってきました。めちゃくちゃ汗臭いんで、洗いましたよ」

 笑いながら、言った。真意を聞くとこう答えた。

「3年使っているこの帽子にはね、興南のみんなの思いが詰まっていると思うんです。だから、みんなの思いも背負おうと思ってね。彼らの思いも一緒に(韓国に来て)応援しているんです。汗かいた分の思いです」

 宮城がプロのスカウトも注目する投手に成長した背景にはナインや周りの人々のおかげでもあると父は言う。シャツも同様に、興南の父母会の人たちの思いを持って応援したいからと着用していた。

 そんな宮城は、スーパーラウンドの韓国戦の5回2死一、二塁のピンチで、ライトの守備から本塁へ矢のような送球で走者を刺した。相手の得点を阻止。ホームインを期待した韓国国民で埋まった球場は1度大きく沸いたが、大きなため息に包まれた。

「あのプレーね……。見逃しちゃったのよ……私。トイレに行ってて。その帰りに報道の方の取材を受けていたら歓声が起きて。まだ映像も見ていないんです」

 苦笑いを浮かべていた亨さん。でも、侍ジャパンのユニホーム姿を見られるだけで感慨深いものはある。

「U-15に選ばれた時のユニホームも飾ってあるんです。宝物です。ウチの子は今回、U-18にも選ばれたので、また飾りたいと思います」

 宮城にとっての高校生活最後の大会、試合が異国の地で幕を閉じた。父はその雄姿をじっと見つめていた。宮城はこの後もプロになり、大きく羽ばたいていくだろう。ユニホームに限らず、父の宝物はこれからもずっと増えていくだろう。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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