「強いチームは接戦に強い」は本当? 状況別の勝率と投打の成績から読み解く

接戦時の打撃成績が良いのはソフトバンク、西武、ロッテ、日本ハム

 次は打撃面にも目を向けていきたい。接戦時と大差時での打撃成績の違いを、チームごとに紹介していく。なお、本塁打率は本塁打を1本放つのに何打数かかるのかを示す指標であるため、数字が小さいほうが優れた数字となる点にはご留意いただきたい。

 大差の試合での勝率が高く、僅差での勝率が低かった楽天は、4点差以上での打撃成績の方が3点差以内の時よりも良くなっていた。同様の傾向を示していたロッテは、打率こそ僅差時の方がわずかに高かったものの、本塁打や打点の効率は大差時の方が優れている。逆に、僅差の試合で強さを発揮するソフトバンクは、3点差以内の際により良い打撃成績を記録した。

 ここまでは勝率通りの結果だが、ソフトバンクと同じく接戦に強いオリックスは、4点差以上のほうが打撃成績が優れているという点がやや興味深いところだ。そのオリックスの成績の内訳を見てみると、4点差以上で負けているケースでは460打数で打率.246、本塁打率32.86なのに対し、4点差以上でリードしている場合は268打数で打率.276、本塁打率33.5と、打率の面で大量リード時が僅差時を大きく上回っている。

 一方、打数に目を向けると、ビハインドを背負うケースの方がかなり多くなっており、打撃成績と勝率の食い違いの要因の一つはここにあるとみなせそうだ。ビハインドを背負うことが多くなっている理由の一つとして、先ほど確認した救援陣の防御率が挙げられる。オリックスは先発防御率3.87に対し、リリーフ防御率が4.44と大きく悪化しており、リリーフに限ればリーグ唯一の4点台となっている。ディクソン投手、海田智行投手、近藤大亮投手といった面々は安定しているが、防御率が4点台以下の投手も多くなっており、リードされた試合でさらに傷口を広げてしまうケースも少なくなかった。

 数字の面では、やはり3点差以内での打率が.274と、全シチュエーション内でもトップの数字を記録している西武の猛打が目につく。全体としては、大差がついた試合では相手の勝ちパターンが登板する可能性が低いこともあって、多くのチームが優れた本塁打率を記録している。そんな中でも、西武を上回る本塁打率を記録しているロッテと、3点差以内時の西武に次ぐ全体2位の打率を残している楽天の奮闘が光っている。

 一方、日本ハムは3点差以内、4点差以上の双方において、本塁打率がかなり悪い数字となっている。中田翔内野手の故障やレアード内野手の退団が影響して長打力不足に陥った印象は否めず、やや迫力を欠いた打線の不調がチーム全体の成績にも影響を及ぼしている可能性はありそうだ。

日本ハム
3点差以内:3384打数862安打、69本塁打380打点、打率.255、本塁打率49.04
4点差以上:943打数236安打、19本塁打114打点、打率.250、本塁打率49.63

楽天
3点差以内:3718打数929安打、107本塁打440打点、打率.250、本塁打率34.7
4点差以上:641打数166安打、23本塁打96打点、打率.259、本塁打率27.87

西武
3点差以内:3402打数931安打、124本塁打521打点、打率.274、本塁打率27.44
4点差以上:1035打数251安打、39本塁打142打点、打率.243、本塁打率26.54

ロッテ
3点差以内:3527打数874安打、117本塁打443打点、打率.248、本塁打率30.15
4点差以上:856打数209安打、33本塁打117打点、打率.244 本塁打率25.94

オリックス
3点差以内:3562打数862安打、70本塁打370打点、打率.242、本塁打率50.89
4点差以上:728打数187安打、22本塁打95打点、打率.257、本塁打率33.09

ソフトバンク
3点差以内:3428打数871安打、137本塁打416打点、打率.254、本塁打率25.02
4点差以上:891打数216安打、33本塁打104打点、打率.242、本塁打率27.00

 実際に数字を見てみると、首位ソフトバンクは接戦での強さが際立ち、「強いチームは接戦が得意」という通説通りの成績を収めているといえる。また、相対的には大差時のほうがより強いという結果となっているものの、僅差と4点差以上の双方で勝率5割を上回る数字を残している西武も、リーグ連覇を争うに相応しいチーム力の高さを示している。

 しかし、3位のロッテと4位楽天の2チームは僅差の試合での勝率が.500を割り込んでおり、オリックスは接戦時の成績はリーグ2位ながら、ペナントレースでは最下位へと沈んでいる。このように、必ずしも接戦に強いチームが上位に位置するというわけでもない、ということも同時に見えてきたと言えそうだ。

 なかなかベストメンバーが揃わない中で試合巧者ぶりを見せつけ、僅差の試合を確実に勝利に結び付けてきたソフトバンクと、圧倒的な打力を武器に点差を問わず強さを発揮してきた西武。大きくチームカラーの異なる2チームによって繰り広げられている優勝争いが“セオリー通り”の結末を迎えるのか否か、注目してみてはいかがだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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