弁護士が日本のスポーツビジネスを変化? 米での経験生かし新規事業【パお仕事名鑑 Vol.7】

海を渡り活躍の場を広げている【写真:パーソル パ・リーグTV】
海を渡り活躍の場を広げている【写真:パーソル パ・リーグTV】

大手法律事務所に所属しながらPLMでインターン 「人に寄り添う仕事をしたかった」

 そもそもどのようなきっかけでPLMと契約することになったのだろうか。

「アメリカでのスポーツにおける弁護士の役割を肌で感じ、スポーツビジネスの実務を経験しなければと感覚的に思っていました。アメリカでいくつか出向先の候補があったのですが、タイミングが合わず1年前にビザが切れてしまって。そこでPLMを紹介していただいて、インターンとして働くことになりました。PLMでは弁護士として法務の仕事をするのではなく、リーグスポンサーの営業など、パ・リーグのビジネスの実務に携わることを希望しました」

 もともとは2か月のインターンの予定だった稲垣さん。PLMとしては新しいビジネスの開拓という成果が、稲垣さんとしてはこの分野の将来性の実感がそれぞれ得られたことで、その期間は延長を重ね、今後1年、引き続き法務以外のビジネスサイドで現在のミッションを進めていくこととなった。

 そもそも、なぜ弁護士としてスポーツビジネス分野でやっていこうと考えたのか。きっかけは高校時代までさかのぼる。

「元からスポーツ分野をやりたかったんです。僕は高校までサッカーをやっていまして、高校生だった頃にサッカー選手の海外移籍のサポートをしていた方が弁護士だったことを知りました。日本人でやってる人は少ないけれどそういう仕事もあるんだと思って。元々スポーツが好きなのでやりがいを感じています」

 稲垣さんはもともと、スポーツを通じて「人に寄り添う仕事」をしたかったと言う。

「これまでのスポーツ業界では海外と日本をつなぐ人が少なく、海外に挑戦したい選手が満足なサポートを受けられず志半ばで挑戦を諦める事例も存在すると聞いています。時間はかかるかもしれませんが、そういう状況を変えていきたいとも思っています。それが選手にとってもチームや企業のためにもなると思うので」

 選手が満足なサポートを受けられずその夢を諦めることになる。弁護士として目指した理由が「人に寄り添う」という稲垣さんにとっては許せないことだった。華やかなスポーツビジネスの裏側を正義感で支える人がいるのは心強い。

「とはいえ所属している法律事務所もスポーツをメインで扱っていなかったですし、大手ですのでクライアントのほとんどは個人ではなく企業。配属されたのはM&Aなどの企業法務を取り扱うチームでした。ただ、企業法務の経験を積んで思ったのは、企業がクライアントといっても仕事で毎日接するのは人ですし、企業のために頑張ることはそこに所属する全ての人のためになる。“企業に寄り添う”仕事をすることで、結果的にはたくさんの“人に寄り添う”ことになる。だから企業法務にもやりがいを感じています。ただ、やはりスポーツビジネスに対する想いがあり、『挑戦しよう』と」

 PLMは稲垣さんにとってその想いを実現できる場所。

「私が行動し始めたのが、ちょうど政府からスポーツ市場規模を拡大する方針が示されて、大手企業がスポーツビジネスへの参入を開始したタイミングと重なりました。現在、ビジネスのプロや企業を支える専門家の方々がスポーツビジネスに続々と参入していて、日本でもスポーツがビジネスとして認識され始めています。ですので、今後、企業法務を専門とする弁護士がスポーツに貢献できる部分は大きいと考えています」

 稲垣さんは今後のスポーツ界のために、弁護士に限らず法律の知識経験を持つ人がより増えてくれることを望んでいる。ただ、稲垣さんにとってスポーツビジネスは完全に新しいことへの挑戦だったはず。どのようなマインドを持っていたのだろうか。

「新しい分野をやるにはいろんな人から情報収集をするために行動する必要があるので、一定程度、自分への投資も必要だと思っていました。会って話を聞きたい人には、その人がどこにいてもどうやってでも会いに行くようにしていました。PLMに入ってからは、個人的にはビジネスの実務は素人なので、ゼロから学ぶ姿勢と気持ちは大切にしています。まだ何も成し遂げてないですが、僕はPLMで学んだことをスポーツビジネスの将来につなげていきたいです」

(「パ・リーグ インサイト」岩瀬大二)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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