年上から尊敬された男 先輩・石川が見てきたヤクルト館山のタフさ、不屈の闘志

翌日先発登板も…後輩のためにセレモニーに参加し思わず涙の石川

 そんな石川に対し、館山は試合後に行われた引退セレモニーで、改めて感謝の気持ちを言葉にした。翌日の試合の予告先発は石川だったため、セレモニー前、館山は石川はそこにいないと思っていた。しかし、「最後の姿を見届けます」と石川は参加していた。その姿を見た館山は、事前に考えていたメッセージではなく、率直な思いを先輩に届けた。

「プロ入り前から石川さんの背中を追いかけてきました。距離を縮めることもできませんでしたが、石川さんがいなければ、僕の今の成績はありません。誰でも分け隔てなく常にチームの中心で活躍している姿は選手の憧れです。これからもチームの、選手の、後輩たちの高い目標で居続けてください」

 心に響く言葉に石川の目からは涙がこぼれた。

 石川だけでなく、ひとつ上の五十嵐亮太投手も「(館山から)学ぶことや、持っている野球の知識は、他の選手とは比べ物にならないほど多い。今後の野球界に何らかの形で活かしてほしい」と話す。野球やトレーニングのことで疑問をぶつけると、的確な答えが返ってきた。最近も上体の使い方について聞いたが、自分には理解できないほどの考えと知識が返ってきたという。石井弘寿1軍投手コーチは「同じピッチャーとして一緒に頑張り、スワローズを支えてきてくれたピッチャーだからとても寂しい。お疲れ様っていう言葉もいいけど、あれだけの怪我をして『ここまでよく頑張った』と言ってあげたい」とねぎらった。

 年上選手からも尊敬される男だった。その不屈の精神を誰も忘れることはない。

(新保友映 / Tomoe Shinbo)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY