菊池、浅村、炭谷…主力が抜けても強かった西武 圧倒的な打力&走力でパ2連覇

4番中村7番山川への打順変更が的中、投打が噛み合ってホークスを捉える

 転機は8月11日のロッテ戦(ZOZOマリン)から昨年の本塁打王・山川を7番にし、中村を4番に据えたことだ。山川はその後、打率.291と復調し、状況に合わせた打撃でチームに貢献した。チームはそれまで貯金「5」の壁を越えることができずにいた。しかし、打線が繋がりを取り戻し、ここから順調に貯金を重ねた。9月に入ると、それまで精彩を欠いていた投手陣が盛り返し、先発陣が軒並みQS(クオリティ・スタート=先発が6回以上投げ、自責点3以下を記録すること)を達成。小野投手コーチが「バッテリーの経験が活きてきた」と分析する通り、勝負どころでは巧みな配球で打者を翻弄し、ビッグイニングを作らせなかったことが勝利に繋がった。投打が噛み合い出したチームは、7月上旬には8.5ゲーム差あった首位・ソフトバンクとのゲーム差をじりじりと詰め、9月11日には首位に浮上。15日にマジック「9」を点灯させ、一気に連覇を決めた。

「悔しいです。まさか今日、2018年のシーズンが終了するとは考えてもいませんでした」

 強力打線を率いて10年ぶりにリーグ制覇を果たした昨年。日本シリーズ出場をかけてソフトバンクと激突したクライマックスシリーズファイナルステージで敗れ、日本一への道は断たれた。辻監督は試合後、マイクの前に立つと、うつむいた。いつも気丈な指揮官が言葉を詰まらせて十数秒の沈黙。やっと顔を上げたが、目は赤く、涙が震える頬を伝っていた。指揮官が絞り出した声に、行き場のない悔しさが滲んでいた。

 あれから1年。悔し涙の跡はすっかり消え、フラッシュと歓声の中で10度宙を舞った。辻監督はシーズン前にこう話していた。「悔しい思いを経験したが、選手たちはこの思いを今シーズンにぶつけてくれる」。指揮官の思いを叶え、日本一になるための旅路の出発点に、再び立った。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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