【プレミア12】元オリ監督が見た侍Jの収穫と課題 周東には「待ってました」とのコメントを…
山口はオープニングラウンドに比べ修正も「高めのストレートの使い方」
彼の持ち味はコントロールだ。ペナントレースとは違い長いイ二ングとは考えていないだろう。初戦はその思いが力みに繋がっていた。カーブとストレートを有効に使い的を絞らせず、ストライクゾーンからボールゾーンに落とすフォークで打ち取るだけでなく他にもパターンを持っている。この日はそれぞれの球を上手く操っていたが、もう少し打ち取る確率を上げるには高めストレートの使い方だと見る。投球術には緩急、高低、左右、対角線、奥行きがある。
一概には言えないが打者の傾向としてバットを立てて構える打者は低めが出易く、寝かせて構える打者は高めが出やすい。逆にその付近にウイークポイントがあるのだが。今日の打者では4番のウェードと7番のジョージがやや寝かせ気味でしっかり寝かせて構えるのは6番の二ルソンだけだった。高目に投げるのは勇気はいるが餌をまき、打者の目線を変えることで低目を痛打される確率は確実に減るだろう。昨日のゲームでは山崎、甲斐野の好投は言うまでもないが、田口と岸の無失点投球が勝利を呼び込んだ。ユーティリティとしての彼らの存在は本当に貴重だ。
ここまで色々と語ったがまずはスーパーラウンド初戦を取ったことは大きい。日本の持ち味が存分に出たナイスゲームだった。オーストラリアは目先を変える継投、逆に日本は先発も素晴らしいが継投に出るほどに計算出来る投手が出てくる、所謂勝算ありの継投、これこそが日本の武器と言える。今日のゲームにはチームとして1点を守り切るという場面はなかったが1点をもぎ取る、与えないという稲葉監督の執念がしっかりとチームに浸透している。継投のタイミングに適材適所に応じた選手起用、それに応える選手、試合ごとに強くなっている。頼もしい限りだ。
打線は円でなければならない。誠也中心に2番・菊池、6番・浅村の存在が大きくしっかり円になっている。鈴木の3戦連続となった1点差に詰め寄る一発はチームに勇気と勢いを与える本当に効果的ものだった。ホームランになっているが決して強引ではなくシンプルに戦っているのが分かる。浅村、近藤の選球眼も光り輝いている。吉田の状況に応じた質の高いバッティングはトータルで見れば相手にとって最も脅威になる。オールマイティの坂本がいて代打で勝負に勝てる山田が控える。投手陣はうしろから山崎、甲斐野、スペシャリストの嘉弥真、スターターも豊富でまさにタレント揃いだ。しっかりとした勝負心と勇気を持って戦えば負ける気はしない。これからも心からの声援を送り続けたい。
◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。14年にはソフトバンクと優勝争いを演じVの行方を左右する「10・2」決戦で惜しくも涙を飲んだ。17年に中日の1軍内野守備走塁コーチに就任し18年まで1軍コーチを務めた。球界でも有数の読書家として知られる。現在は福岡6大学野球の福岡工大の特別コーチを務め、心理カウンセラーの資格を取得中。178センチ、78キロ。右投右打。
○『世界野球プレミア12』の主な予定(テレビ朝日系列で放送)
11月13日(水)午後6時45分~ 「日本×メキシコ」
11月17日(日)「決勝」
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)