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話題の評論家、お股ニキが提案する新しいピッチデザイン法 「究極を言えば…」

令和元年も残すところ1か月あまり。今年の流行語大賞の最終候補が発表されるなど、世間はすでに1年を締めくくる態勢に入っているが、今年“野球本”界で最も大きなセンセーションを巻き起こした作品と言えば「セイバーメトリクスの落とし穴 マネー・ボールを超える野球論」だろう。著者は、お股ニキ氏。野球経験は中学の部活までで、しかも先輩と喧嘩になって途中退部してしまったという。だが、著作は発売と同時に大きな話題を呼び、野球ファンのみならず、ソフトバンクの千賀滉大投手らプロも愛読書として手にしている。

ボールは与えられる回転で変化「究極を言えば、握りはどうでもいいと思うんです」

 スライダーの握りやリリースする時の手首の角度、ラグビーのスパイラルパスのような螺旋回転をするジャイロの握りなど、ボールを持ちながら大いに盛り上がる中、話題はヤンキースの田中将大投手にも及んだ。田中が投げるスライダーの中には時折、ボールがホップしたり、シンカーのように沈んだりするような変化が見られるものがある。ホップして見えたものは「バックスピンもかかるカッター寄りだったということですよね」と解説するお股氏は、“落ちるスライダー”をこう説明する。

「田中投手は去年くらいから横スラを増やしているんですけど、それまでは縦スラ気味、スラッター気味のスライダーを投げていました。それで、やっぱり投げミスとかで少し軸がずれるとボールはシュート回転をする。なので、確か大谷(翔平)選手と対戦して三振取った球も、インコースのスライダーを投げたはずなのに、逆にツーシームやスプリットみたいに落ちていましたよね。握りはスライダーなのに」

 変化球談義に花が咲く中、お股氏は非常に興味深い結論を導き出した。

「究極を言えば、握りはどうでもいいと思うんです。どう握ろうが、その回転軸と速度で投げたらそう変化するわけです。だから、逆にどういう変化を与えたいかで握りを決めることもできる。与えたい回転から握りを作るピッチデザインができる時代かなと思います。そういうアプローチがあってもいいんじゃないかな、と」

 もちろん、与えたい回転から探り、到達する握りは1つではない。投げる人の体格、指の長さ、手の大きさなど「自分が持っている特徴を生かせばいいと思うんですよ。画一的にやる必要はなくて、その人にしかできないこともあると思うから」と話す。

 お股氏が「万能変化球」と呼ぶスラッターもまた、投手によって少しずつ違った特徴を持っている。不変の理論と個性を巧く融合できた時、野球はまた新たな面白さを生み出すのかもしれない。

<プロフィール>
お股ニキ(@omatacom)
レアルマドリードの大ファンで、野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してツイッターで発信し続けたところ、2万8000人以上にフォローされる人気アカウントとなる。ツイッター上でのやりとりで交流が始まったカブスのダルビッシュ有選手をはじめ、多くのプロ野球選手や専門家から支持を集める謎の「プロウト(プロの素人)」解説者。著書に『セイバーメトリクスの落とし穴 』(光文社新書)。11月28日には新刊「なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか」(宝島社新書)を発売。日本のプロ野球に厳然と存在するセパの格差について、データと独自の視点から分析、評論している。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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