【野球と記録】野球はなぜ「記録のスポーツ」に? 19世紀後半のリーグ戦開始がきっかけ

同時進行的に行われる「リーグ戦」が記録の重要性を高めた

 アメリカ北部で盛んだった野球は、南北戦争で南部にも広がった。チーム数が増える中で、実力が近いチーム同士での定期的な試合が組まれ、これがリーグに発展した。世界で初めて「リーグ戦」を考案したのはアメリカの野球だ。1871年に最初のリーグであるナショナル・アソシエーションが誕生したのだ。ちなみにサッカーの最初の「リーグ」であるイギリスのフットボール・アソシエーションは、ナショナル・アソシエーションを参考に作られたものだ。

 リーグ戦はトーナメント戦と異なり、複数の球場で同時進行的に行われることが多い。観客は、リーグ戦ではすべての試合を観戦することはできない。そのために、試合は「記録」という形で保存され、集計され比較される。勝敗や選手の成績も数字で残ることとなった。

 リーグ戦が始まってから、野球の魅力はさらに厚みのあるものとなった。各チームの成績は勝敗表という形でまとめられ、優勝チームが決められた。選手の個人成績は、投手と野手別に集計され「Stats(Statistics=統計の略語)」という形で公表された。これによってファンはチームの強さや選手の優劣を数字で比較し、楽しむことができるようになったのだ。

 当初、MLBの記録部門を担当していたのは新聞社だった。新聞記者たちが試合のスコアをつけ、集計していた。しかしリーグが大きくなり、試合数も増えるとともに、新聞社を経て集まった記録を集計し、管理する必要が生じた。1913年に創設された「アル・マンロー・エリアスビューロー」(エリアス・スポーツビューロー社の前身)は、まさにその任を担った。

 こういう形で、野球は「記録のスポーツ」としてアメリカのファンに支持されるようになっていった。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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