阪神スアレスが掴んだジャパニーズドリーム メキシコで語り継がれる右腕の物語
メキシカンリーグでは若手の給料は数十万円、日本に来て10倍以上に膨れ上がり強烈なインパクトを
サルティージョの球団関係者でさえ「まったくプロ経験のない選手が、メキシカンリーグで1年目からあそこまで凄い成績を残すなんて誰も思っていなかったし、メジャーや日本の球団からオファーがくるなんて、思いもしなかった。球は速かったし、直球で三振も奪っていたが、まさかあれだけ化けるとは…。もうあんなことは2度とないんじゃないかと思う」と明かす。
メキシカンリーグは日本とは違い、契約時にサイドレターを付けて年数を特別に定めている場合を除き、国内選手だけでなく外国人選手にも通常は契約年数というものがないため、他国のチームが同リーグの選手を獲得する場合には、所属チームに違約金を払わなければならない。通常、違約金の額は決まっておらず、その選手を保有する球団の言い値だ。
ソフトバンクがスアレスを獲得した際には、当時サルティージョには1000万円以上の違約金が入ったと言われている。複数のメジャー球団からもオファーが届いたため、球団側が違約金の額を高めに設定したのだ。スアレス自身も、来日1年目は推定年俸5000万円で契約。メキシカンリーグでは、実績のない若手の給料は月十数万円から数十万円で、年俸制ではなく、月ごとの日割り計算となるため、年収は日本に来て少なくとも10倍以上に膨れ上がった。そんな高額アップを勝ち取ったことも、メキシコ国内に強烈なインパクトを残したのだ。
ソフトバンクへの移籍から5年が経った今でも、メキシコの選手や関係者らの記憶に鮮明に残っている“スアレス伝説”。58試合に登板し、26ホールドを挙げたソフトバンクでの16年の活躍後、トミージョン手術での離脱もあり、その後は思うように成績を挙げることはできていないが、阪神に移籍した今季、再び日本で結果を残すことができれば、メキシコでの評価も再び上がることになるだろう。
(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)