普段はスポーツトレーナー 埼玉西武ライオンズ・レディース・六角彩子の夢

埼玉西武ライオンズ・レディースの六角彩子さん【写真:編集部】
埼玉西武ライオンズ・レディースの六角彩子さん【写真:編集部】

仕事をしながら野球を続ける、夢は満員のスタジアムでプレーを見てもらうこと

 女子硬式野球クラブチーム「埼玉西武ライオンズ・レディース」が今年の4月から本格的に活動を開始する。記者会見には侍ジャパン女子日本代表で経験豊富な六角彩子内野手と出口彩香内野手が出席。ライオンズのユニホームを着て、プレーできる喜びを語った。NPB球団が初めて支援する形で始動するクラブチーム。ただ「支援」といっても球団から給料が支払われるわけではない。彼女たちは別で生計を立てながら、野球に取り組むというのが実情だ。

 六角さんは18歳の時に日本代表に選ばれ、2010年のW杯で大会MVP、首位打者を獲得するなど、4大会連続で出場。すべて世界一に輝いた。大好きな野球を続けるために、大学卒業後は多くのスポーツクラブを経営する株式会社ジーズニューコンセプトに入社し、「加圧スタジオFUSION」でパーソナルトレーナーとして働きながら、クラブチームで野球と向き合ってきた。

「仕事を始めて6年目になります。体の勉強をして、理学療法士の資格も持っています。今はパーソナルトレーナーとして多い時で1日、12~13人を指導させていただいています。お客様の体がどんどん変わっていく過程を見るのが、とても楽しいですし、やりがいを感じていますね」

 正社員でありながら、トレーナーの仕事は週に3日ほど。会社の事業で野球スクールで講師をすることもあったが、勤務日はそれほど多くない。それは、同社の佐藤浩至社長が女子野球への理解、野球への愛情があるからだった。練習が確保できるような勤務体制となっていた。

「クラブチームで野球を続ける人は、仕事と野球のスケジュール調整が大変な人も多いです。でも、私は恵まれていると思います。会社、社長にはとても感謝しています」

 大きな夢を描きながら、トレーニングを指導をし、勤務後や土日に野球の練習に打ち込んでいる。自宅の素振り部屋には、ライオンズ・レディースのユニホームが飾ってあるという。このユニホームを着て、ファンを魅了するプレーができる日を楽しみにしている。

ライオンズ・レディースには六角さんのことが書かれた書籍を読み、憧れを抱いていた少女が入団

 大きな夢を描きながら、トレーニングを指導をし、勤務後や土日に野球の練習に打ち込んでいる。自宅の素振り部屋には、ライオンズ・レディースのユニホームが飾ってあるという。このユニホームを着て、ファンを魅了するプレーができる日を楽しみにしている。

 いつかは大好きな野球で生活ができるようになることが目標だ。

「ただ、その前の段階で(女子野球界では)もっとやることがあると思っています。私はいつか満員の球場で野球がしたいです。昨年、巨人のファンフェスタのイベントに参加させていただいたんですが、ファンの皆さんの熱気がすごかった。いつか経験したいですね」

 男性の野球に見慣れているファンは物足りなく感じてしまうだろう。だが、それに負けないように彼女たちも力を付けてきている。選手たちの生活が保障されたわけではないが、NPB球団の支援は女子野球界にとって一歩前進となった。

「私は好きなことをやっているので……。趣味と言われれば趣味なので、休みがなくても、大変とは思わないですよ。一人でも多くの女の子たちが野球を続けていけるようになればいいと思っています」

 同じ埼玉西武ライオンズ・レディース22名のメンバーの中に、中学時代に六角さんのことが書かれた書籍を読み、憧れを抱いていた少女が選ばれたという。彼女の名前は小野あゆみ投手。六角さんの背中を追いかけ、以前、所属していたクラブチームに入部。埼玉西武ライオンズ・レディースに六角さんの入団が決まると、セレクションを受け、見事、合格したのだ。六角さんも当時からの思いを聞き、感銘を受け、アドバイスを送っているという。人の縁には驚かされる。

 まだまだ、女子野球界には乗り越えないといけない課題はある。ただ、夢は与えられるし、叶えることだってできる。六角さんが一人の少女に影響を与える選手となったように、一歩ずつでもいい。さらに未来が動き出すことを期待したい。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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